企業会計基準委員会は、2017年7月20日に企業会計基準公開草案第61号「収益認識に関する会計基準(案)」(以下「収益認識(案)」という)及び「収益認識に関する会計基準の適用指針(案)(以下「適用指針(案)」という)」を公表した。この収益認識(案)及び適用指針(案)は、2021年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用される予定である。2018年4月1日以後の早期適用も可能である。これらの案が正式に公表になれば、2007年12月に制定された工事契約会計基準及び適用指針が、2021年3月31日をもって廃止される予定である。

収益認識(案)に定める収益に関する会計処理については、企業会計原則にも実現主義の定めがあるが、収益認識(案)が優先して適用されることになる(目的1項)。「我が国においては、企業会計原則に、『売上高は、実現主義の原則に従い、商品等の販売又は役務の給付によって実現したものに限る。』(損益計算書原則三B)とされているものの、収益認識に関する包括的な会計基準はこれまで開発されていなかった」(経緯87項)。つまり、収益認識に関しては、企業会計原則ではなく、この会計基準が優先適用されるということである。その範囲は「顧客との契約から生じる収益に関する会計処理及び開示に適用される」(3項)とある。但し、金融商品に関する会計基準、リース取引に関する会計基準等6項目には適用されない。

建設業者も収益認識(案)の対象業種である。工事完成基準及び工事進行基準を収益認識(案)に照合させて、工事収益を認識することなり、詳細は後述するが、収益認識(案)では、契約資産と契約負債の変動で収益を認識する。また収益認識(案)は、工事進行基準の適用に関しては、工事進捗度と履行義務の充足に収斂される。履行義務の充足は、「充足した時に収益認識」するか、「充足するにつれて収益認識」するかの2つであり、工事進行基準は、後者に該当し工事収益を認識することになる。さらに、履行義務の充足が資産の移転であり、資産の移転は、企業から顧客へ資産の支配が移転した時に生じるという考え方(支配モデル)を、収益認識(案)は採用している(片山[2017]、183頁)。斎藤[2013]も「工事契約の収益もこの支配の移転でとらえた義務の履行に則して認識されるが、それは必ずしも完成基準に限られるわけでなく、一定の条件が満たされれば従来の進行基準に準じたやり方で収益認識できる」(247頁)と述べている。従って、会計処理については、現行の工事完成基準及び工事進行基準の適用と大差なくほぼ同様である。