ロケバス(貸切バス)の許可申請について、法改正のポイントを述べる。

営業所、休憩仮眠施設や車庫については、もちろん一定の条件を満たさなければいけないが、最近、許可をいただいた事例に基づき、許可申請時に準備することや気をつけなければいけないことを述べる。

 

1.安全統括管理者

法改正(平成29年6月22日公示)で追加された「安全統括管理者」が必置であり、運行管理者や整備管理者の上に位置する職制であり、安全統括管理者に就任できる人を計画に立てる必要がある。資格的には、運行管理者や整備管理者の資格は必要ないが、もちろん所持していることに越したことはない。安全統括管理者としての実務経験が必要とされる。つまり、安全統括管理者の実務経験証明書が添付書類として求められる。

その実務経験とは、貸切バス業者またはロケバス業者での「運行管理の経験が3年以上」または「整備または整備管理の経験が3年以上」である。これらの補佐経験でも可能である。但し、一般乗用(タクシー業界)での経験は不可である。車種が異なるからである。注意が必要である。

許可申請書の事業計画に、安全統括管理者の履歴書、実務経験証明書、就任承諾書が添付書類になっているので、実務経験証明を得ることができなければ、許可申請は前に進めることができない。つまり、新規申請の場合は、安全統括管理者の実務経験証明書は他社の証明になる。安全統括管理者の要件を備えた者を立てる必要がある。

安全統括管理者は、運行管理者、整備管理者を兼ねることができるので、一人で足りることになるが、その場合は、「整備または整備管理」の実務経験が3年以上必要であり、運行管理者の資格証、整備管理者選任前研修終了証明書が必要になる。

また、安全統括管理者は運転者を兼ねることは可能であるが、行政側は勧めていない。なぜならば、法的には違法でないが、本来、運行管理者や整備管理者の上位に位置する職制になり、運転者との兼務を勧めていない。もっとも、安全統括管理者が運行管理者と兼ねる場合は、運転者を兼ねることができない。つまり、運行管理者は運転者を兼ねることができないからである。

 

2.運行管理者が2名以上必要

最低車両3両で申請する場合、運行管理者は1名でよかったが、平成29年11月より2名になった。予定する車両が3両に、安全統括管理者、運行管理者2名、整備管理者1名が必要である。行き過ぎた行政だと思うが、許可申請の基準だから仕方がない。貸切バスの事故で、許可条件が厳しくなった。それにしても行き過ぎた行政である。

 

3.整備管理者1名が必要

整備管理者に就任する方は、「整備管理者選任前研修終了証明書」だけではダメで、実務経験証明書が求められる。これも貸切バス業者かロケバス業者での「点検か、整備か、整備管理かのいずれかの経験が2年以上」必要である。もっとも、該当する整備士の資格があれば、整備管理者選任前研修終了証明書は不要である。

安全統括管理者と整備管理者を兼ねる場合は、「整備また整備管理の経験が3年以上」あればよい。実務経験として5年以上にはならない。もっとも点検だけでは、整備管理者になれても、安全統括管理者には就任できない。整備か整備管理の経験が3年以上求められる。安全統括管理者と整備管理者を兼ねる場合は、事前に「整備管理者選任前研修終了証明書」を得る必要がある。この研修は半日で終了し、その場で証明書を取得することができる。

 

4.現地調査がある

許可申請したあと、申請時及び一定日の開始資金に関する残高証明書が求められる。その後、法令試験の合格発表を受けて、補足書類を求められる。それらが完了すれば、営業所と車庫に関する現地調査である。従来は、許可を受け、運輸開始後に現地調査があったが、法改正後は、現地調査後でないと許可に進まない。担当官がメジャーをもって実測する。

 

5.車の点検整備に関する書類が増えた

「貸切バス予防整備ガイドライン 整備サイクル表」が追加された。この表は予定する事業用自動車ごとに作成する必要があるが、専門である自動車整備会社で作成してもらう必要がある。ただ、車種によって異なるので、不要な箇所は線で消すことになる。

 

6.事業用自動車一覧表(見積)が増えた

この様式の一覧表が7年分必要である。次の事業収支見積書と連動する形になり、予定する車種の一覧表を年度ごとにまとめる。初年度登録、取得年月、購入費またはリース費、減価償却費、修繕費、年間走行距離、ドライブレコダーの装着の有無、ドライブレコダーの導入費、ASV技術の種類、後付ASV導入費の内容になっている。

 

7.事業収支見積書が増えた

計画期間7年間の「一般貸切旅客自動車運送事業に係る事業収支見積り」が追加された。また、「一般貸切旅客自動車運送事業以外の事業の経営状況」も7年間必要である。他の事業を実施しない場合にも作成が必要で、その場合は、一般貸切旅客自動車運送事業のみになる。

 

8.安全投資計画の書類が増えた

次回の更新時までの期間における事業の展望、更新までの期間に実施する事業及び安全投資の概要を7年間記載することになっている。また、上記の自動車一覧表と事業収支見積書と連動さす必要がある。①運転者、運行管理者、整備管理者の確保予定数 ②車両取得予定台数及び保有車両台数 ③その他の安全確保のために必要な事項がある。詳細は省く。

 

9.その他

営業所、休憩仮眠施設、車庫、前面道路等については、従来と同じであるので、ここでは省略している。