1.JVの会計組織

JVは、各建設会社が構成員となり、各建設会社の会計処理方法はそれぞれ異なっていることが多いため、まずJVとしての統一的な会計組織や会計処理を決めておく必要がある。

JVの会計処理には、①JVとして独立した会計処理と②スポンサー企業(スポンサー)の中で行われる会計処理の二つの方法がある。

JVの会計処理については、少し古いが、行政として大切な方針を明確にしている。それは、「共同企業体運営モデル規則」(平成4年3月6日、建設業経振発第33号)である。この中の経理取扱規則第5条によれば、「共同企業体は、独立した会計単位として経理すること」とされている。

実際の会計実務では、共同企業体の経理が完全に独立した会計組織として整理されていることは少なく、スポンサー企業の会計組織の中に取り込まれて整理されている方式が多くみられる。ただし、それであっても、JV会計の本則の意図をしっかりと理解して、実質的に独立会計と同等の効果をもたらす工夫は不可欠である。

同取扱規則の注において、「記帳の様式その他経理処理の手続については、実際上代表者の例によることが考えられる。」と記載されている。また、「共同企業体の規模、性格等によって、効率的、正確性等の観点から代表者の電算システム等を適宜活用することも差し支えない。その場合は、代表者に委任する経理事務の範囲を経理取扱規則に明確に定めていかなければならない。」とされている。以上の文言が、JV会計の原則的整理方式と実務的な便宜方式の調和で、かなり実践的といえる。

 

2.JVの会計規則

「共同企業体運営モデル規則」には、JVにおいて整備すべきいくつかの規則が規定されており、このうち会計規則としてのものが「経理取扱規則」である。

次に簡潔に解説する。

① 経理の目的と会計処理方法

JVの経理取扱規則は、会計処理、費用負担、会計報告等について定めることにより、共同企業体の財政状態及び経営成績を明瞭に開示し、JVの適正かつ円滑な運営と構成員間の公正を確保することを目的として定められている。

JV工事における経理業務は、個別工事契約会計基準における場合と本質的な違いはなく、次のような具体的プロセスによる。

1 会計伝票、帳簿の作成、証憑書類の整理
2 工事費の支払、請負金の請求および配分
3 実行予算書の作成と原価計算
4 月次経理諸表の作成・管理
5 JV決算書の作成および監査

 

② JVの会計期間

JVの会計期間は、JVの成立の日から解散の日までとし、月次の経理事務は毎月1日に始まり同月末日をもって締め切る。

 

③ JVの経理処理

JVは、原則として独立した会計単位として処理するが、前述のとおり、経理処理の手続きについては、実際上、スポンサーの例によることが多く、JVの規模、性格等によって、効率性、正確性等の観点から代表者の電算システム等を適宜活用することも差し支えないものとされている。

会計帳簿の内容は、仕訳帳、総勘定元帳およびこれらに付随する補助簿からなる。勘定科目は、建設業法施行規則別記様式第15号および第16号に準拠して定める必要がある。

 

④ 出資および支払方法

JVの運営の特徴は、各構成員がJV全体の資金計画に従って、JV協定書の出資割合に基づいて出資を行い、その割合によって工事利益を獲得することにある。したがって、まずJVの契約を結ぶ前に各構成員の出資の割合をJV協定書において定める必要がある。そして、工事着工後JVの責任者(所長)は速やかに資金収支の全体計画を立て各構成員へ提出し、毎月、資金収支管理のため、各構成員に対しての請求を行う。各構成員は、この出資請求書に基づき出資を行うことになる。

 

⑤ 協定原価

協定原価とは、共同企業体の共通原価に算入すべき原価をいい、その内容はJVの施工委員会で作成し、運営委員会の承認を得ることとされている。JV工事を施工する場合、単独工事と同じように実行予算に基づく原価管理が行われるが、必要以上の経費がJVの共通原価として処理されないように実行予算の作成にあたって協定原価の範囲を明確にしておく必要がある。「共同企業体運営モデル規則」別記様式において、協定原価算入基準として55項目の協定原価を例示している。

 

⑥ 工事実行予算

工事実行予算案は、工事計画に基づき施工委員会で作成し、運営委員会の承認を得る。JVの所長は、予算の執行にあたっては常に予算と実績を比較対照し、施工の適正化と予定利益の確保に努める。また、予算と実績の間に重要な差異が生じた場合には、その理由を明らかにした資料を速やかに作成し、施工委員会を通して運営委員会の承認を得ることになる。

 

⑦ 決算案の作成と監査

JVの所長は、工事竣工後速やかに清算業務に着手し、財務諸表すなわち、貸借対照表、損益計算書、完成工事原価報告書、資金収支表、前記書類の附属明細書を作成する必要がある。JVの監査委員は、決算案および全ての業務執行に関する事項について監査を実施して監査報告書を運営委員会に提出しなければならない。

 

[入門] 建設業会計の基礎知識からの引用