コーヒーを注文し、やがてコーヒーが運ばれてきます。
店員さんが、最後にお客さんの顔も見ず、邪魔くさそうに早口に「ごゆっくりどうぞ」と言いながら去っていきます。ひどい人になると「ごゆっくりどうぞ」が反対向きになって去っていきます。いつも思うのですが、心のこもっていない「ごゆっくりどうぞ」は言わないほうが良いと思います。
まるで決まり文句のように「ごゆっくりどうぞ」。人によっては、こちらが怒られているような印象さへ待ちます。行く店行く店、殆ど同じようです。
同じ言うなら、心を込めて、笑顔を浮かべながら、お客さんの顔を見ながら、ゆっくりと、「ごゆっくり、過ごしてくださいね」とか、「新聞を持ってきましょうか」とか、その場、その場に応じた応対ができないのでしょうか。
普通のお店でも、新しく入った人の応対は、まだ気持ち良さがあり応対してくれますが、1ヶ月もすれば、他の人と同じ対応になり、ぶっきらぼうに「ごゆっくりどうぞ」になっていきます。ご本人は気づかないのでしょうね。また、お店の人も注意しないのでしょうね。本当に、邪魔くさい「ごゆっくりどうぞ」が、耳障りになります。
昔、たまに行っていた某喫茶店がありました。おそらく、アルバイトの方だったと思いますが、実に気持ちの良い応対をしてくれる女性がいました。決まりきった言葉ではなく、その時の雰囲気で言葉を添える人でした。心がこもっていて、いつも笑顔で接してくださいました。
私が本を読んでいたら、小さな声で、「お時間の許す限り、ゆっくりしていってくださいね」と、私の顔を見ながら、優しく語ってくれました。実に気持ちの良いものです。気に入って、半年ほど通っていましたが、ある日、辞められたということで、その店は行かなくなりましたが、忘れられない応対ぶりでした。
店長の話では、彼女がいる日は、お店も忙しく繁盛していましたが、彼女が辞めてからは、しばらく暇な日の連続でしたとおっしゃいました。そこで店長は、これではいけないと思い、徹底的に来客の応対ぶりを研究されて、お店のみんなに、彼女のような応対ぶりをするように徹底されました。来る日も来る日も、心を込めて、対応されました。添える言葉も、その場、その場で違います。
久しぶりにその店に行って、びっくりしました。「ごゆっくりどうぞ」という言葉の変わりに、どの店員さんも実に気持ちよく応対されます。お客さんが忙しくされている様子なら、笑顔を残して一礼して静かに去っていきます。違うお客さんには、「何かありました、いつでも呼んでください」と言って、笑顔を持って去って行かれます。同じコーヒーを飲んでも、おいしさがひとしおです。そのお店は、今も繁盛しています。
壊れたテープレコダーのように心ない「ごゆっくりどうぞ」は、言わないほうが良いと思います。心を込めた一言は、お客さんが呼び寄せ繁盛店に変身します。