商社時代に企画課のK室長から、いつも言われていたことです。

「おまえは、得意先との付き合いで毎晩のように飲み歩いているが、家庭を大事にしているか。奥さんも大切にしているか。接待も結構だが、家庭崩壊にならないように気をつけろ。営業成績も優秀で、専務からの評判もいいようだ。得意先を増やし、売上を上げることも会社にとってはありがたいことだ。しかし、繁栄発展の中に愛がなければ、本当の発展にはならないぞ。社長の経営方針も知っているだろう。たまには、家族サービスもしろ」

 その時は、あまり繁栄発展の意味をよく理解していませんでした。会社に最大の利益をもたらすことが、繁栄発展だと思っていました。

 その後、K室長から社長の経営方針である発展の意味を教えていただきました。

 発展とは、よく「愛の拡大再生産」と言われます。発展の中に、愛がなければ発展とは言わないという意味です。経済原理ばかりを追求した発展は、砂上の楼閣のごとく脆いものです。発展とは、愛が大きく膨らんでいく状態をいいます。愛が膨らんだ状態が発展です。

 お金が潤沢にあって、無借金経営を続けています。上場会社になりました。従業員が300人の会社に成長しました。一般的に見るならば、発展や成功という言葉で表現されます。

 3年で上場会社に育てあげた経営者が、よくメディアで紹介され、スポットライトを浴びています。スゴイことです。評価すべきことでしょう。

 しかし、ライトの当たらない部分では、大きな犠牲を払っています。家族が病気をしています。取り返しのつかない家庭不和などを生んでいることがよくあります。見えない部分を見るということも大事なことでしょう。

 くだんの経営者は経済原理ばかり追求し、愛の拡大再生産という意味では、かなりつらい面があります。しかし、そういう卓越した経営者は、必ずどこかで発展という本当の意味に目覚められます。発展という苦悩を繰り返し、発展の本質を見抜き、本当の意味で、愛の拡大再生産を実践されていきます。仕事でも家庭でも発展されていきます。

 商社時代に、よき経営者に恵まれ感謝しています。

 現代はこういう経営者が増えています。資金繰りも上手。会計や法律の知識も備えています。従業員の悩みも理解し、幸福の拡大に向けて心を砕きます。家庭ユートピアも大事にされます。何よりも愛に目覚め、人間関係のエキスパートでもあります。医者でも、弁護士でも大学教授でも太刀打ちできません。

 発展という愛の拡大再生産に目覚めた経営者が21世紀をリードしていきます。21世紀のトップランナーは会社の経営者です。

 愛に目覚めた真の経営者が、日本のゴールデンエイジを築いていきます。