1.直接投票により選ばれた、自治体首長の権限

日本の首相選びに問題があります。例えば、知事や市長は、実は「大統領制」で選ばれています。選出方法としては、住民の直接投票で選ばれているわけです。ところが中央は、議会で多数を取ったところが与党になり、そのなかから選ばれた人が総理大臣になるという、間接的な形になっています。そして、内閣は、全員の意見が一致して初めて、結論が出せるような組織になっています。

したがってシステム上は、地方の首長のほうが、独裁者になれるスタイルなのです。それで、「住民の支持を、直接、受けている」ということで、頑固に意見を述べ、主張を譲らないでいるわけです。

 

2.中央集権国家として力を持つには、大統領制のほうがよい

ところが、総理大臣のほうは、政治上の争点について信を問うて通ったわけではない人ばかりです。内部力学によって選ばれたり落とされたり、マスコミによって世論が操縦されて、支持率が上がったり落ちたりするようになっています。ですから、大統領制を提案しているのは、「本来の中央集権国家として力を持つには、大統領制をとるべきであり、その方が地方を押さえ込むだけの力が出てくるのだ」ということです。

今の議院内閣制では、行政府が弱すぎるのです。議会の紛糾に耐えられず、あまりに弱すぎるので、大統領制のほうがよいと思います。

大統領制になると、「大統領が完全に独裁者になるか」といえば、そういうことはありません。国民の投票で選ばれるわけですし、任期を切れば問題ないと思います。終身制にしなくてよいのです。そうして国民から直接に選ばれた人であるならば、実行力が伴ってくると思います。

 

3.国難の時期にこそ、求められる大統領制

(1)多数派を形成しない政治家と、組織融合型の政治家

例えば、少し前の話になりますが、石原慎太郎氏が国会議員を辞めて、東京都知事になりました。彼は、今の議院内閣制のなかでは、総理大臣になれない人でした。派閥力学のなかで、子分を養い、多数派を形成できるような人ではなかったからです。しかし、全国区や、東京都のようなところで投票すれば、トップを取れるわけです。もし、総理大臣が、大統領制のように、日本全体からの直接投票で選ばれるのであれば、彼は、総理大臣になれる可能性はあります。

けれども、今の議院内閣制の下ではなれないのです。むしろ、そのような人は、個性が強すぎて弾かれてしまいます。どちらかというと、個性が強すぎず、「まあまあ」と言って組織をまとめるような「組織融合型の人間」のほうが、総理大臣になりやすい傾向にあります。

かつて、小渕恵三氏が総理だった時には、「もし、東京都知事に立候補したら、落選しだろう」と言われていました。日本では、都知事に立候補したら落選するような人が、総理大臣になれるのです。

 

(2)元総理で、都知事に当選できる人、できない人

最近の人では、例えば、安倍晋三元総理のような人が都知事に立候補すれば、当選するかもしれませんが、福田康夫元総理のような人が都知事に立候補したら、落ちていたかもしれません。

そのように、直接投票であれば当選しない人でも、議院内閣制では当選することがあるということです。実は、これが中央の政府が弱く、地方の首長のほうが、岩盤のように強くなっている理由です。元大阪府知事なども、マスコミで名を売った方であり、タレント性があることと口がたつということで、かなり自由なことをやっているようですが、知事の反乱のようなものが、各地でたくさん起きているのも、議院内閣制のために中央政府の指導力が低いからです。

しかし、現実に、国難の時期が来ており、国家は財政危機にありますし、外交上も危機です。そうであれば、地方分権などというのは、とんでもない話であり、もっと強力な中央政府がなければいけない時期だと思います。「政治家よりも、官僚のほうが強い」と言われていて、官僚を弱めることによって、相対的に政治家を強くしようとしているわけですが、こういう考え方はナンセンスです。

 

(3)官僚が求めているのは、「格上」の政治家

官僚たちは、自分たちを指導できるぐらいの政治家を求めているのです。そういう政治家がいれば、きちんと言うことは聞くのですが、「自分たちよりも、明らかに格下の人が政治家になっている」ということがあるため、言うことを聞かないわけです。しかし、この官僚制を壊したら、おそらく、本当に国家そのものが崩壊するでしょう。

意思決定ができない政治家ばかりですが、役所のなかで、官僚が自分たちの与えられた仕事について進めているので、何とか国がもっているところがあるのです。

政治家のほうは、選挙で負けるような争点は避けて通っているので、本当の意味での国民の信任を得ているとは言えません。しかも、マスコミも、あまりもだらしない「談合マスコミ」になっています。

「談合マスコミと、だらしない政治家の組み合わせによって、この国は動いているのだから、地方に任せたほうがよいのではないか」と言う意見が出てきます。しかし、それは、昔の「藩制度」のスタイルに戻すことになります。ただ、それはおそらく、はっきり言って、二等国への転落の完璧な引き金になると思います。完全にそうなると思います。

 

(4)大統領制で独裁が怖ければ、任期制を取り入れる

本当の意味で、行政の長としての指導力を発揮したければ、国民の直接投票で選ぶ「大統領制」を敷くのが正論でしょう。独裁を怖がるのであれば、任期制を取り入れればよいだけのことです。

直接投票であれば、幕藩体制のようなものは、なかなか続かないと思います。現在は、むしろ、世襲議員がいくらでも出せるような状態になっているので、これは、民主主義の精神に反する面がかなりあるのではないでしょうか。私はそう思います。能力本位になっていません。親が有名になっているので、その子供も政治家になれるということです。それとタレント議員です。タレントと世襲しか政治家になれないというのでは、やはり、国家が不毛であり、国民の信頼を得られないと思います。地方から反乱の狼煙(のろし)が上がったりするのは、ある意味で当然でしょう。