「トランプ新大統領で、世界はこう動く」からの抜粋です。

ドナルド・トランプは、「関税制度すなわち輸入にかける税金は、外交上の武器の一つである」と考えているわけです。たとえば、中国の外交政策が気に食わなかったら、中国に高い税率を課すことができます。中国がアジアの国を侵略しようとしたら、トランプは中国からの輸入品に対する関税率を変えるでしょう。これは、”熱い戦争”を起こさず、銃弾もミサイルも第七艦隊も使わない”武器の一つ”です。こういったことを考えているわけです。

私はかつて、「TPPは中国のAIIB(注)」に対抗するために創設されたものなので、日本にとって重要である」と指摘しました。AIIBは中国が世界のリーダーになるための外交政策なので、日本にはTPPが必要であり、環太平洋地域の高い関税障壁をなくす必要があるのです。

それがオバマの考え方で、日本は参加するしかありませんでした。さもなくば中国が、外交面や、対アフリカや西アジア、もちろん北アジア、南アジア、東アジアも含めて、貿易面で勝利を手にし、アメリカをハワイまで追いやってしまうでしょう。それが彼らの基本戦略なので、TPPが必要なわけです。

しかし、トランプ氏は考え直すでしょう。オバマ氏は当然、TPPに参加すべきだとドナルド・トランプを説得するでしょうし、日本政府はTPPを急いで通し、バラク・オバマが退任する前に、トランプ氏がホワイト・ハウスで着任する前にTPPに参加するよう、アメリカに圧力をかけるでしょう。

現時点では、二つの道があると考えねばなりません。一つは当然、TPPに参加し、環太平洋をガードして繁栄していくことです。もう一つは、ドナルド・トランプの言葉の通り、「アメリカを再び偉大な国とし」、世界のために新たなリーダーシップを発揮することです。

この点についてトランプは、オバマと同じく「アメリカは世界の警察官ではない」と述べましたが、本心ではないと思います。彼は、まずはアメリカ経済を再建し、次いで外交面で覇権を握るでしょう。それに加えて、ロシアとアメリカの関係を再構築することを望んでくるでしょう。

もちろんトランプは、「日本は日本であるべきだ」と主張しています。そう言っています。これはもっともなことであり、正義であると思います。日本は「日本」であるべきです。日本は世界第二位か第三位の経済大国です。「第二か第三」というのは、中国の経済統計は疑わしいものであり、経済計画にバブル的な数字が入っているからです。

たとえば中国は、今年の各四半期の経済成長率が6.7パーセントだったと発表しましたが、これは国家計画上の成長率と同じであり、現実の経済ではありえないことです。数字が大幅に操作されており、共産党員が、習近平にクビにされたくないためなので、信用することはできません。実際には、実体経済の結論として、中国と日本の「経済成長率」と「経済力」には、それほど差がないと思います。ここ2、3年のうちに、それが明らかになるでしょう。・・・(5)に続く。

(注)AIIB(アジアインフラ投資銀行)は、アジア向けの国際開発金融機関。57の加盟国を創設メンバーとして、2015年12月に中国主導で発足した。