1.要点

 当該管理建築士は、以下の場合は、建設業における技術者として配置できません。。

⑴ 建設業における専任技術者である場合

 当該管理建築士が、建設業における専任技術者である場合は、専任を要する工事現場に技術者として配置できません。

 なぜなら、建設業の場合、営業所における専任技術者は、営業所に常勤して専らその職務に従事することが求められているためです。

 特例として、下記の要件を全て満たす場合は、当該工事の専任を要しない技術者として配置ができます。根拠通達は平成15年4月21日国総建第18号「営業所における専任の技術者の取扱いについて」です。現在は、建設業許可の審査基準に掲載されています。

① 当該営業所において請負契約が締結された建設工事であること

② 工事現場の職務に従事しながら実質的に営業所の職務にも従事しうる程度に工事現場と営業所が近接し、当該営業所との間で常時連絡をとりうる体制にあること

③ 所属建設業者と直接的かつ恒常的な雇用関係にあること

 

⑵ 配置技術者の専任性が求められる工事現場

 当該管理建築士は、配置技術者の専任性が求められている工事現場に、技術者として配置できません。

 なぜなら、建設業者は、元請下請の別にかかわらず、公共性のある施設若しくは工作物又は多数の者が利用する施設若しくは工作物に関する重要な建設工事の場合は、専任性を求められます。具体的には、民間工事を含み、個人住宅を除くほとんどの建設工事が該当し、工事一件の請負代金の額が3,500万円(建築一式工事の場合は7,000万円)以上の建設工事です。

 このような建設現場においては、建設工事の安全かつ適正な施工をより厳格に確保するため、監理技術者等を工事現場ごとに専任で置かなければなりません。(建設業法26条3項、施行令27条1項)

 ここでいう「専任」とは、他の工事現場に係る職務を兼務せず、常時継続的に当該工事現場に係る職務にのみ従事することをいいます。

 

⑶ 監理技術者が求められる工事現場

 当該管理建築士は、監理技術者が求められる工事現場に技術者として配置できません。なぜなら、監理技術者も当然に専任性を求められるからです。

 監理技術者が求められる工事現場とは、元請工事で、特定建設業者が4,000万円(建築一式工事の場合は6,000万円)以上を下請契約して建設工事を施工する場合です。その時に、特定建設業者が工事現場に配置する技術者のことを「監理技術者」いいます。根拠条文は建設業第26条第2項です。

 また、監理技術者は、一級建築士の資格以外に監理技術者の資格者と講習修了者でなければなりませんので、技術者として配置できません。

 

⑷ 遠方である工事現場

 当該管理建築士は、遠方である工事現場に技術者として配置できません。

 なぜなら、管理建築士は事務所に常勤し、専ら管理建築士の職務を行う必要があり、不測の事態に対応できることが求められています。これは、建設業における専任技術者も同様です。したがって、上記⑴と同様の考え方で近傍の工事に制限されるからです。

 

⑸ 公共工事における代表者や経営業務管理責任者の場合

 これに関しては、各役所での取り扱いが異なります。当該管理建築士が建設業における経営業務管理責任者(経管)であっても、工事現場の技術者に配置できる場合とできない場合があります。また、当該管理建築士が代表者である場合も、工事現場の技術者に配置できる場合とできない場合があります。

 したがって、各役所で確認の上で対応するしかありません。

 

2.建築士事務所における管理建築士の専任性

 建築士事務所における管理建築士の専任性は、事務所に常勤し、専ら管理建築士の職務を行う必要があり、他社の常勤取締役、常勤従業員などの兼務はできないと規定されています。根拠条文は建築士法24条です。この規定は、建設業における経営業務管理者、専任技術者の専任性と同趣旨だと理解できます。

 しかし、従来から容認されているとおり、同一法人における同一事務所内での、建設業における代表者、経営業務管理責任者及び専任技術者の兼務は可能です。同様に、建築士事務所における管理建築士も兼務できると考えます。

 

3.まとめ

 以上をまとめますと、同一法人における同一事務所内であれば、建築士事務所の管理建築士も、上記⑴~⑸の建設業における工事現場以外なら技術者として配置できると考えます。なぜなら、技術者としての専任性が求められないからです。