ゼミナール経営学入門(第3版)の第14章「リーダーシップ」をまとめてみました。

前提

優れたリーダーシップとは何か。理論やマニュアルではない。歴史や文学から学ぶべきもの。実践を通じて体感するものかもしれない、理論や技術よりアートであるかもしれないと目され、明確な結論は得られていないが、この複雑な現象を理論的に議論するための基本的な枠組みを提案する。と述べている。

 

1.リーダーシップとは何か

①定義

人がついてくる。まとめる力である。定義としては「人について行こうと思わせ、そして彼らをまとめる属人的影響力」である。リーダーは、外への顔、上への顔、下への顔の3つを持っているので、連結の機能である。リーダーシップは、下への顔、内への顔に関するものである。

 

②役割

集団内の下向きの顔として、仕事の遂行・集団の維持・仕事と集団の変革がある。

仕事の遂行には集団内のマネジメントが期待される。①集団の基本的な任務、役割、目標を決定する。②価値、行動規範を設定する。③仕事の仕方を指示する。④集団ならびに個々の部下を動機づける。⑤集団ならびに個々の部下の仕事の結果を評価し、適切な行動をとる。

集団の維持には、仕事を遂行すればいいだけではない。①集団の学習を促進させる、教育する。②社会的な相互作用の場としての集団を維持する。

仕事と集団の変革には、変化していく環境の中でその集団の存在意義を保つためには、変革という役割も必須とある。

 

③マネジメントとリーダーシップの違い

リーダーシップの位置づけ(377頁)

マネジメント全体 経営戦略
経営システム
経営理念・ 人(リーダーシップ)

戦略にせよ、システムにせよ、理念にせよ、マネジメントとして意味をもつのは、戦略の内容であり、システムの仕組みであり、理念の魅力である。それらが、人々の行動に影響を与えることによって、組織全体、集団全体の協働ができていく。しかし、リーダーシップは属人的なものである。人の大切さがもっとも色濃く出るマネジメントの一部である。

属人的影響力の対象としては、仕事の遂行、集団の維持、変革の三つとも対象になる。

良きリーダーシップは、上の顔にも、外の顔にも重要な役割を果たすが、リーダーシップは集団を率いるリーダーの部下たちへの概念である。と位置づけていて、リーダーシップという言葉を狭く定義して用いる。それは、リーダーシップという便利な言葉は、その定義をかなり限定的にしないと、言葉の意味が広がりすぎて、意味がないのと同じになってしまうからだと、述べている。

 

2.リーダーシップの源泉とパラドックス

①フォロワーが決めるリーダーシップの源泉

リーダーシップの鍵は、フォロアーによる受容である。受容されるパワーの源泉がある。①懲罰を与える力 ②報奨を与える力 ③判断への信頼感 ④個人としての魅力 ⑤正当性の5つである。

パワー源泉のうち、懲罰と報奨は、組織がリーダーに与えた力で、属人的ではなく、地位的なパワー(立場のパワー)である。あと3つの源泉は、フォロアーが感じる、受け入れても良いと思うようなパワーであり属人的である。地位的なパワーより、真のリーダーシップの源泉になりうるのは、人間的な魅力、判断への信頼感、正当性である。究極的な属人的影響力の大きさは、結局フォロアーが決めている。

 

②リーダーシップの二重のパラドックス

リーダーシップを発揮しやすい源泉は、主に「判断への信頼感」であり、次に正当性の確保である。個人としての魅力は、ここでは議論になじまない。リーダーの役割は「仕事の遂行・集団の維持・変革」であった。そのマネジメントのためにリーダーは多様な判断をする立場にあるから、判断への信頼感を高めようと努力する。しかし、現実はそう簡単ではない。そこに様々な逆説が生じる。

リーダーへの信頼感へのインパクトについては、2つの逆説がある。(382~386頁)

信頼感の増と減が生じる場合 仕事の自由度に関する判断(自由と規律の逆説)

①自由を喜ぶ者

②指示されて動く者

業績達成度にはマイナスの

インパクトが働く

典型的な例として、業績悪化時の雇用維持の判断

①雇用を守り抜くという判断

②従業員の信頼をとるか、企業の業績をとるか

前章までの様々な逆説的現象は、一つの判断が、リーダーシップの源泉にどのような影響を与えるかを考える以前に、一つのリーダー行動が集団としてのパフォーマンスに与える影響自体が、すでに逆説的現象で、ジレンマに満ちている、ということを意味していた。

ここでの逆説は、リーダーが下す判断が今度は判断の信頼感とか正当性、あるいは報奨を与える力といったリーダーシップの源泉に相反するインパクトをもってしまう逆説である。

いわば、二重の逆説がリーダーシップとリーダーによる判断の間に存在している。二重性の具体例として、「部下の仕事能力を向上させるためのリーダーの指導」が示されていて、リーダーは様々なジレンマや逆説を経験するが、その逆説を乗り越えてこそ、リーダーとして成長できるのである。と導いている。

 

③哲学、原理原則の必要性

リーダーシップの様々なジレンマがあるが、あるべき姿としての二つの理論がある。

普遍主義の理論と相対主義(コンティンジェンシー理論)である。著者は、コンティンジェンシー理論から導かれる最も重要な示唆と問題点をあげている。

重要な示唆とは、リーダーは、状況に応じて適切な行動をとらなければならない。状況を洞察して、必要な行動を選択するということは必要である。

問題点は、①状況に合わせて適切な行動をとるという姿勢そのものが、日和見的であり、マイナスの効果をもつ。判断への信頼感というリーダーシップの源泉に大きなマイナス効果をもつ。②そのような行動は、リーダーを疲弊させてしまう。状況の変化に合わせて適切な行動をとろうとすれば、大変な計算の努力がいる。とりわけ、不確実な環境ではそうである。このような行動をとろうとすれば、リーダーは文字どり、疲弊してしまう。

そこで必要になるのが、普遍主義の哲学である。理念、思想である。

優れた経営者は、状況に応じた臨機応変な対応力と原理原則をもっている。普遍主義に意味があるとすれば、それは、リーダーに、確固とした基盤、信念を与えるからである。松下幸之助とジャン・リブーの例をあげている。優れた経営者は、原理原則へのこだわりから、原理原則と現実の矛盾を創造的に解消するような考え方を生み出している。

上で述べた逆説は、調停不可能な矛盾ではない。それを解消したり、止揚したりすることは可能である。そのためにも、原理原則へのこだわりがいる。

以上をまとめると、「リーダーのジレンマと哲学」となる。(388頁)

リーダーシップの

ジレンマ

状況主義的対応

(計算的・疲弊)

哲学の必要性

(普遍主義)

 

3.リーダーシップの条件

一つの企業組織の中のさまざまなポジションで、それぞれにリーダーシップが発揮されることが、組織のマネジメントのためには必要である。前節までの議論では、その発揮を考えるための基礎的な概念枠組みを考えてきた。

この節では、実際にリーダーシップが組織内で発揮される条件が述べられている。補佐役の重要性、変革型リーダーの条件、リーダーたるべき人材が育つ条件の三点である。

 

○ 補佐役の重要性

リーダーシップというむつかしい機能を果たすのは容易ではないため、しばしばリーダーシップの機能の分業が起こる。そこで、リーダーシップを発揮されるために補佐役が必要になる。補佐役のいろんな例をあげ、リーダーシップの分担がどのようにして行われるか、補佐役の仕事はなにかについては、理論はない。むしろ、その理論づくりはこれからの課題である。それを考える手がかりとして、補佐役の機能を述べている。

第一は、主人役の補完である。異質の組み合わせ(静と動、内と外、陽と陰)が良いが、むずかしい。その葛藤を処理するのは、リーダーと補佐役の深い絆がなければならない。

第二は、狭い意味での補佐役の条件は、専門性である。

第三は、諫言である。独善的な判断をもとに暴走し、組織に大きな不幸や損害をもたらす例が多い。このようなリーダーに戒めと諌めが必要である。

第四は、「てこ」としての補佐役である。リーダーの意図を拡大し、より徹底させるという意味の補佐役である。

リーダーと補佐役との関係はきわめて微妙である。リーダーと補佐役との間には、複雑な心理的葛藤が生じることが多い。とくに補佐役は、さまざまな葛藤とジレンマに直面する。

 

○ 変革型リーダーの条件

調整型リーダーと変革型リーダーがあるが、調整型リーダーだった人を変革型リーダーとして組織の人々は認めない可能性が強い。現在は、変革型リーダーがより多く必要である。組織として、変革型リーダーを見つけるか、育成する努力が必要がある。

そこで、変革型リーダーが備えていなければならない条件は、変革のための判断ができる能力を本人がもっていることと、そうした判断への信頼感を人々がもてることである。その能力と信頼感のベースになる条件は、次の四つのように思われる。(392~393頁)

大きな視野 深い思考 筋の通った決断 ぶれない判断

・大きな視野

①短期的な判断になりにくい。②思いも掛けぬ重要な要因を見落としにくい。

③大きな視野の中には、細かな人間の感情のひだへの視点も含まれているので、現場で働く人間たちの心情を汲み取った判断が生まれやすい。

・深い思考

①さまざまなことを考える深さが大切。②深い思考があると、正しい判断につながるというメリットだけでなく、「思考実験」や「模擬演習」が出来ていると、現実に事が起きても、瞬間的な修正判断がつきやすくなる。

・筋の通った決断

①視野の大きさや思考の深さがあっても、決断ができないとリーダーの条件を欠いている。「決める」ことが大切である。②その決断が「筋の通った」ものが重要である。

③筋が通るとは、論理があること。論理があるから、人々の納得性が高まる。過去から現在へと、「一つの筋」という首尾一貫性があること。④筋が通った決断ができるという信頼感、筋が通った人だという信頼感。この二つの信頼感が人々をして、リーダーについていかせる。

・ぶれない判断

①判断がぶれないこと。②状況変化や抵抗等に対応して、基本方針がぶれていたら、誰もついていかない。③ぶれないリーダーの観察として、誠意と論理がある。誠意は、信念や哲学に裏打ちされた、他人に対する誠意、自分の責務に対する誠意がある。論理は、思考の深さから生まれた、自分たちがやりはじめた変革のプロセスの正しさについての論理的なバックアップである。そのバックアップが、ぶれなくても大丈夫、ぶれない方がよりよいという論理的な基盤を与えてくれる。その支えがなければ、誠意だけでは変革のプレッシャーには対抗できない。と結んでいる。