一万円札をドブに捨てる者はいませんが、建設会社ではこれに近いことが日常茶飯事のように行われています。

 ある倉庫では、材料や小道具が至るところに散在しています。大工道具の山、ペンキやハケなど、数え上げればきりがありません。小さな部品などの置場もバラバラで収集がつきません。奥の方に置いてある品物が分かりません。必要なものをすぐに取り出すにも時間がかかります。見た目にも汚く、薄暗くてスムースに動くことができませんでした。

 連休を返上して、社長以下従業員が一丸となって掃除を始めました。ネーム版を作ってすぐに分かるように区別しました。仕切りや棚板で取りやすくしたり、動きやすい空間を設けました。ガラスや床、壁を徹底的に磨きあげ、照明の数も増やしました。生れ変った倉庫を見て、みんなが感動しました。

 型番が古くなって使えなくなった製品。同じ小道具を二重三重に買っています。かなり高価な器具や資材もそのまま。多くの無駄が目の前で確認されました。きっちりと計算したわけではありませんが、何と原価で800万円程度の数字がはじき出されました。倉庫係を雇い入れても充分に採算がとれます。それ以上に営業や現場サイドへの牽制になり、得するお金は800万円以上の価値を生み出します。

 掃除と整理整頓が徹底していません。つまり、環境整備が末端まで浸透していない会社の姿です。環境整備の基本が掃除と整理整頓。みんな知っています。分かっています。誰も目を向けようとしません。行動に移そうとしません。いつかいつかがこの始末です。

 会社を発展させる要素や原理原則はたくさんありますが、案外、環境整備を核において徹底させている会社は少ないと思います。筋のとおった徹底ぶりは、お金をもたらします。

 環境整備にお金はかかりません。むしろお金が貯まります。その会社は今もピカピカの倉庫と事務所で仕事をしています。