運送業の許認可で特に問題になるのが、車庫に係る前面道路の幅員です。公示で「車両制限令に抵触しないこと」という記載で、簡単に済ませていますが、道路幅員は重要な要素を含んでいます。

 

1.道路の考え方

 ここでいう道路とは、国道、都道府道、市道を前提にして話を進めていきます。

 道路は、歩行者は元より、自転車、単車、トラック、大型バス、小型バス、乗用車等々が通行します。道路交通法の歩行者優先ではありませんが、まず歩行者を優先で考えることは、運送業の許認可の場合も同様です。

 簡単に道路の幅員は、道路の「総幅員」と「車両幅員」に区別されます。総幅員は、通常、路肩が含まれています。車道と路肩の区別がつく道路は、さほど問題にはなりませんが、車道と路肩の区別つかない道路、あるいは路肩の幅員が明らかでない道路は、現実に多くあります。この場合が要注意です。

 車両制限令の「幅の制限」に関する第5条及び第6条については、後ほど詳細に説明いたしますが、この第5条及び第6条も、車道幅員を前提に条文が規定されています。

 例えば、市街地区域内の道路を通行する車両の幅は、次の式により算定することになっています。車両制限令第5条2項の規定です。

   車両の幅≦(車道の幅員-0.5m)×1/2

 この場合における「車道の幅員」とは、道路の総幅から路肩の幅員の合計が標準(1m以上)である場合はその路肩幅員の合計を、標準未満である場合又は路肩幅員が明らかなでない場合は、路肩相当分として1mをそれぞれ減じたものをいいます。

 この場合、道路の総幅員が5mで路肩幅員が明らかでない場合は、5mから1mを減じた4mが車道幅員になります。上記の車両の幅を計算しますと、(4m-0.5m)×1/2=1.75mになり、車幅が1.75mを超える車両は通行が出来なくなり、車両制限令に抵触することになります。基本的には、第5条及び第6条は、この考え方が前提になっていますので、車道幅員が可能でも、路肩部分を無視できません。

 車道と路肩が区別できない道路の場合は、要注意です。運送業の許認可で前面道路の幅員は、車道幅員だけではなく路肩を含めた総幅員で判断します。非常に大事なポイントです。単純に第5条及び第6条の規定を鵜呑みにしないことです。

 もっとも、車道幅員と路肩幅員が明らかでない場合には、事前に道路管理者で確認されることが賢明です。

 

2.車両制限令に抵触しないこと

 運送業の場合、前面道路の幅が、車両制限令に抵触しないことになっています。そこで、土地の契約前に前面道路の調査が必要になります。

 道路幅員は市街地内(第5条)と市街地外(第6条)により異なります。また、予定される車両の最大幅により、必要な道路幅員が変ってきます。下記の車両制限令の抜粋を参考になさってください。

 

車両制限令(第5条と第6条)の規定

 

道路の区分

必要な車道幅員

(道路の総幅員ではない)

必要な路肩部分

市街地内

両通道路

車両の最大幅×2+0.5m

路肩幅員が明らかでない場合は、車道幅員に1mをプラスします。

ゆえに、左記の車道幅員+路肩部分=総幅員になります。

一通道路

車両の最大幅+0.5m

極小指定道路

車両の最大幅+0.5m

繁華街の両通道路

車両の最大幅×2+1.5m

繁華街の一通道路

車両の最大幅+1m

繁華街の極小指定道路

車両の最大幅+1m

市街地外

両通道路

車両の最大幅×2

一通道路

車両の最大幅+0.5m

300m以内に待避所

がある道路

車両の最大幅+0.5m

極小指定道路

車両の最大幅を超えないもの

 

2.車庫の前面道路が私道の場合

 車庫の前面道路が私道の場合は、「地主の通行承諾書」が必要になります。幅員に関しては、最大車両が通れる幅があれば問題ありません。車両制限令のシバリはありません。

 但し、私道が農地の場合は、農業委員会からの雑種地などの転用許可があれば問題ありません。