1.運送業と収集運搬業の根本的な違い

貨物に関しては法令で明確な定義はされていませんが、主にトラックや列車などに積んで輸送する荷物のことを言います。

これに対して産業廃棄物は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律で下記のように明確に定義されています。「産業廃棄物とは、事業活動に伴って生じた廃棄物のうち、燃え殻、汚泥、廃油、廃アルカリ、廃プラスチック類その他政令で定める廃棄物(輸入された廃棄物並びに本邦に入国する者が携帯する廃棄物を除く)のことを言う」。

簡単に言うと「貨物は我々の生活に必用なもの。廃棄物は我々の生活に不要なもの」とお考えいただくと理解しやすいかと思います。

したがって、貨物を運ぶのが運送業、廃棄物を運ぶのが収集運搬業ということになります。つまり、貨物を運ぶ時は運送業の許可が必要になり、廃棄物を運ぶ時は収集運搬業の許可が必要になります。

結論的には、産業廃棄物を運ぶには収集運搬業許可が必要ですが、運送業の許可は不要です。また、運送業の許可は貨物を運ぶ事ができますが、産業廃棄物は運ぶことはできません。貨物も廃棄物も両方運ぶ時には、運送業と収集運搬業の両方の許可が必要になります。

 

2.産廃の収集運搬業について

⑴ 他人の産廃を運ぶ場合は、産廃の収集運搬業の許可が必要です。

⑵ この場合の車両は、都道府県に登録が必要である。自社の車両はもちろんのこと、賃貸して利用する車両も登録が必要です。しかし、京都府は自社の車両しか認めていない行政もありますので、注意が必要です。

⑶ 運転者は、収集運搬業の許可を得ている会社の運転者であること

⑷ 再委託について

産廃業の場合、再委託が原則として禁止されているのは、廃棄物処理業者は、委託を受けた廃棄物の処理を自ら行うことを前提として許可を受けているものであり、その処理業務を更に他人に委託することは、許可制度の趣旨からして望ましいことではないからです。また、排出事業者から委託された廃棄物が転々と再委託を重ねることは、その処理について、責任の所在を不明確にし、不適正処理を誘発するおそれがあるです。

 

3.一般貨物運送業者(実運送者、利用運送業者)

⑴ 運送業の許可だけでは、産業廃棄物は運送できません。

⑵ 産業廃棄物を運送する場合は、収集運搬業の許可が必要になります。

⑶ 傭車について

貨物の傭車に関しては、第一種利用運送の登録を受けていれば可能であるが、産業廃棄物の傭車はできません。元々、運送業の許可は、産業廃棄物を運ぶ事ができないから、当然に産業廃棄物の傭車もできません。

上記の2で述べたように、産業廃棄物に関しては、再委託は認められていませんので、産業廃棄物の傭車(再委託)という概念は存在しません。

 

4.自社物の取扱いについて

⑴ 産業廃棄物収集運搬業者とは

他人(他事業者)が事業活動に伴って排出した廃棄物(他人物)を、中間処理施設または最終処分等に直接運ぶ事業です。

⑵ 原則論

上記⑴が産業廃棄物収集運搬業者の定義ですので、自分(自社)が事業活動に伴って排出した廃棄物(自社物)を、自分(自社)で運ぶ場合は、収集運搬業の許可は不要です。

⑶ 自社物の概念があいまい

この自社物と他人物の判断は、業種や職種によって異なりますますので、確認が必要です。例えば、建設業が元請工事の現場から排出される産業廃棄物に関しても、原則、自社物扱いになりますが、自社物にならない場合がありますので、ご注意ください。事前に行政に取り合わせてください。また、同じ産業廃棄物でも、各行政で自社物の取扱いが異なる場合がありますので、事前に各行政に問い合わせが肝要です。