1.概要
まさに、他人の褌で相撲をとっている日本の企業にメスを入れる指標です。自己資本でなく、他人資本で経営している会社が多いのも事実です。
会社の財産状態の健全性を表しています。今の経審では、財務健全性指標として掲げられている二つ目の指標です。寄与度は14.6%もあり4番目に重要な指標です。
算式は、(自己資本/総資本)×100です。
自己資本とは、払い込んだ資本金と過去から現在まで稼いだ余剰金の合計です。簿記的に言えば、資本金+別途積立金等+繰越利益金のことです。
自己資本に対して、借入金や支払手形で資金繰りをする場合があります。それを他人資本と言います。工事未払金もすぐに支払をしていませんので、他人資本になります。
借りたお金も会社の現金に変わりがないので、資本の中に含めます。つまり、総資本=自己資本+他人資本の式が成り立ちます。例えば、会社に現金が1,000円あっても、他人から借りたお金が500円で、資本金として払い込んだお金が500円とします。総資本が1,000円で、自己資本が500円、他人資本が500円です。
会社の貸借対照表は、こんな形で出来ています。右側が、他人資本と自己資本の形になっています。左側は、現金預金、受取手形、固定資産などがあり、その合計が総資本になります。総資本から他人資本を引けば、自己資本になります。
総資本は総資産、他人資本は負債、自己資本は純資産とも言います。貸借対照表は、総資産、負債、純資産と言う名称で表しています。ゆえに、経営分析で自己資本と言えば、純資産のことを指します。
この指標は、自己資本と総資本を比べて、財産状態の健全性を表しています。会社に現金が1,000円あり、他人から借りたお金が0円ならば、自己資本も1,000円になり、総資本=自己資本ですから、最高の数値になります。これは理想の形ですが、一部の会社を除いて、借入金等の他人資本があるのが普通です。
この指標は、総資本に占める自己資本の割合を表していますので、100%に近いほど、その会社は健全であるということになります。
2.アップ対策
経営者のマインドを変えることに尽きます。経営者のマインドを変えない限り、良くなることはありません。
答えは簡単。自己資本を増やし、総資産を減らすことです。
利益を上げ、余剰金を増やしていくことは、誰でも知っています。増資をすれば、資本金が増え、バランスが良くなり、経審がアップすることは、みんな思っていますが、実行できないだけです。なぜ実行できないのか、お金がないからです。
それを達成するには、経営者のマインドを変え、達成させる情熱と中長期的な努力で可能になります。その一番最初の経営者のマインドを変えない限り、次に進むことができません。その最大のネックが、納税意識です。この納税意識を変えない限り、経審アップや分析アップなど、小手先の方法論にしか過ぎません。
利益と納税についての考え方を知ってください。
納税額が増えることは、同時に内部留保が増えることでもあります。
日本には数多くの会社がありますが、そのうちの約7割が赤字会社であると言われています。もちろん、商売が下手で赤字になっていることがありますが、税金の支払いを逃れるために赤字をつくっている会社も非常に多くあります。
小さな会社の社長にとっては、税金対策、税務署対策も非常に重要な仕事の一つです。税務署との「ケンカ」は社長でなければできません。その意味において、これはとても難しい仕事だと思います。
しかし、これについても、社長は新たな能力を磨いていかなくてはなりません。小さな会社では、一人か二人の経理担当者を雇い、彼らが作成した資料をもとに、社長は会社の運営について判断していると思いますが、社長自身も本などで勉強し、経理の知識を身につけることが必要です。
「税金が払える」というのは、「少なくとも税金に倍するぐらいの利益がある」ということを意味しています。そもそも利益がなければ税金は払えません。
税金を払わなくても済むようにするため、赤字にも黒字にもならないスレスレのところを狙って経営する人も多くいますが、それは結局において、無駄な経費を使ったり、無駄な投資をしたりしているにすぎないことがよくあります。節税に夢中になっていると、放漫経営に陥るおそれがあることを知ってください。
「稼ぐに追いつく貧乏なし」と言われますが、毎年毎年、会社として利益をあげていくことを優先させるべきです。利益以上の税金はありえません。税金は利益の半分程度なのですから(現在は3、4割程度)、むしろ、「自分の会社も税金を納められる身分になりたい」と考えるべきです。
また、毎年毎年、納税額が増えていくことは、同時に、利益が増えていくことも意味しています。違法なことでもしないかぎり、納税をせずに利益を蓄積できた会社はないのです。納税額が増えていくことは、同時に、内部留保が増えていくことでもあります。この点を無視してはいけません。
日本という国において経済活動の場を提供され、日本人を相手に商売をしている以上、それによって得た利益の一部は国家に還元すべきです。また、お金は天下の回りものであり、自分の会社が納めた税金は、やがては商売相手のほうへも流れていきます。お金の循環、法則を知ってください。自社が納税せずに、天下の回りものにはなりません。
その意味では、「事業によって得た利益の半分程度は公金である」と考えたほうがよいのです。
もちろん、節税がいけないと言っているわけではありません。合理的な節税をすることは大事です。ただ、「節税のみに社長のエネルギーを注いでしまっては、会社の発展はありえない」ということです。
小規模企業は役員報酬で取って、増資資金にプールしておくべきです。府下、県下でBランクを目指し、大きな工事を受注するにも、余剰金が必要になります。いつもダム経営を意識され、納税と利益の意味を噛みしめてください。
○ 自己資本を増やす
① 早急に比率を上げるには、可能な限り増資をして資本金を多くすること。代表者からの借入金がある場合、これを資本金に振り替える方法があります。
② 自己資本は、資本金と会社が蓄積してきた剰余金で構成されています。増資以外には、経営活動によって純利益を継続的に増すことで、自己資本の総額が増えます。
③ 月次決算を勧め、赤字決算を避けること。
○ 総資本を減らす
① 経営活動に不要な有価証券や土地などを処分し、借入金の返済に充て、財務体質をスリム化することで、総資産の割合が少なくなります。
② 役員、従業員への貸付金があれば、銀行の個人貸付金を斡旋するなどして、早急に回収する。
③ 仮払金のような仮勘定科目も、きちんと精算すること。