現在の経営状況分析では、下記の「表-1」のとおり、属性として「負債抵抗力」「収益性・効率性」「財務健全性」「絶対的力量」の4種類に分けて評価しています。それぞれの属性に2つずつの指標があり、全部で8つの指標になります。その合計評点が経営状況評点(Y点)になります。

表1-経営状況分析指標の一覧

属 性

指 標

寄与度

上限値

下限値

負債抵抗力

純支払利息比率

29.9%

-0.3%

5.1%

負債回転期間

11.4%

0.9か月

18.0か月

収益性・効率性

総資本総売上総利益率

21.4%

63.6%

6.5%

売上高経常利益率

5.7%

5.1%

-8.5%

財務健全性

自己資本対固定資産比率

6.8%

350.0%

-76.5%

自己資本比率

14.6%

68.5%

-68.6%

絶対的力量

営業キャッシュ・フロー

5.7%

15.0億円

-10.0億円

利益剰余金

4.4%

100.0億円

-3.0億円

 

 今回は「収益性・効率性」の一つである「総資本売上総利益率」について、説明いたします。この「総資本売上総利益率」の寄与度は21.4%もあります。この寄与度21.4%は、「負債抵抗力」の一つである「純支払利息比率」の寄与度29.9%に次ぐ、2番目に寄与度が大きい指標です。

 「純支払利息比率」の寄与度29.9%+「総資本売上総利益率」の寄与度21.4%=51.3%になり、経営分析の寄与度の半分以上を占めます。したがって「総資本売上総利益率」も重要な経営指標の一つになります。

 算式は、

 総資本売上総利益率=売上総利益/総資本(2期平均)×100で計算します。

 売上総利益とは、簡単に売上高から売上原価を差し引いた金額です。通常、粗(あら)利益という言葉で表現されます。売上高は完成工事高+兼業事業売上高であり、売上原価は完成工事原価+兼業事業売上原価です。経営状況分析では兼業事業も含めた金額で、粗利益を計算します。

 総資本とは、総資産と同じ金額で、いわゆる貸借対照表の総資産金額です。負債と純資産の合計額でもあります。全投下資本ともいえます。総資本の2期平均ですから、直前決算期と前期決算期の平均です。

 つまり、粗利益を総資本で割ったものに100を掛けて、%(百分率)で表した指標が、総資本売上総利益率です。当然にこの指標が高いほど収益性が良いことになります。経営状況分析では、総資本売上総利益率の上限値は63.6%で、下限値が6.5%です。つまり、総資本売上総利益率63.6%になれば、この指標に関して最高評点になります。

 この指標の見方ですが、例えば、総資本1億円の会社が粗利益500万円を稼ぎますと、総資本売上総利益率は500万円÷10,000万円×100=5%になります。また、総資本5千万円の会社が粗利益500万円を稼ぎますと、総資本売上総利益率は500万円÷5,000万円×100=10%になります。

 同じ500万円の粗利益でも、総資本5,000万円の会社の方が、経営状況分析では優秀な会社になります。小さな総資本で粗利益を大きく稼ぐが、この指標のポイントになります。

 但し、この指標を算出するときに、総資本額が3,000万円未満の場合は3,000万円とみなして計算することになっています。このため、小規模法人や欠損金額が大きい場合には、総資本が3,000万円未満となるような企業は、不利に働きます。これは仕方のないことです。

 この指標は、簡単に言えば「企業の資本収益性」を示す指標ですが、経審独自の指標といえます。なぜなら、一般的には、資本に対する利益率の指標は、営業利益や経常利益、あるいは純利益に対するものが多いからです。

 ともあれ、小さな総資本で粗利益を大きく稼ぐことが重要であり、この指標をアップするには、総資本を減らすか、粗利益を増やすかの2つです。具体的な方法論は、「総資本売上総利益率の評点アップ対策」の記事を参照なさってください。