経審の「その他審査項目W点(社会性等)」に、技術者・技能者の継続的な能力研鑽を促す観点から、「知識及び技術又は技術の向上に関する取組の状況(W10)」が新設されました。令和3年4月1日からスタートです。つまり、総合評定値(P点)の内、その他審査項目W点(社会性等)の10項目に追加され、技術力(Z点)ではなく、社会性等(W点)に加点されます。
技術者に関する評価と、技能者に関する評価の2つがあり、一定の計算方法で算出した合計数値を「W10の評点表」に当てはめて評点を算出します。評点は0点から10点まであり、満点で10点です。P点に換算すると、W点のウェイトが0.15ですので、1.5点アップします。
まず、技術者に関する評価については、建設業者に所属する技術者が、審査基準日以前1年間に取得したCPD単位の平均値により評価します。
CPDとは、Continuing Professional Developmentの略であり、技術者の継続教育を意味します。建設関係の資格認定団体が実施しており、資格取得後の継続的な教育プログラムや講習会等を提供しています。その講習会を受講すれば、CPD単位を取得できます。例えば、建設業振興基金で監理技術者講習を受講しますと、CPD単位が取得でき「建築・設備施工監理CPD実績証明書(受講履歴付き)」を発行してくれます。これらの団体には、日本建築士連合会、全国土木施工管理技士会連合会など27団体があります。
次に、技能者に関する評価については、建設業者に所属する技能者のうち、認定能力評価基準により受けた評価が審査基準日以前3年間に1以上向上(レベル1からレベル2等)した者の割合により評価します。
この技能者に関する評価は、国土交通省の建設キャリアアップシステム(Construction Career Up System, 略称CCUS)に登録して評価を受けなければなりません。CCUSは、建設業に関わる技能者の資格・社会保険加入状況・現場の就業履歴などを登録・蓄積し、技能者の適正な評価や建設事業者の業務負担軽減に役立てるための仕組みのことです。
上記のように「知識及び技術又は技術の向上に関する取組の状況(W10)」は、CPDプラスCCUSの成績評価でW10の評点を算出します。一定の計算方法については、国土交通省のHPなどを参照ください。
ご存知だと思いますが、経審の総合評定値(P点)は、経営規模、経営状況、技術力、その他審査項目(社会性等)の合計で計算され、それぞれのP点に占めるウェイトは、経営規模は40%、経営状況は20%、技術力25%、その他審査項目は15%で、合計100%になります。
今回の経審の改正は、その他審査項目の追加改正です。現在、その他審査項目は9項目あり、①労働福祉の状況(社会保険等加入状況)、②建設業の営業継続の状況(営業年数)、③防災活動への貢献の状況(防災協定)、④法令遵守の状況(指名停止等の減点項目)、⑤建設業の経理の状況(経理事務士等)、⑥研究開発の状況、⑦建設機械の保有状況(該当する重機等)、⑧国際標準化機構が定めた規格による登録の状況(ISOの取得)、⑨若年の技術者及び技能労働者の育成及び確保の状況(若手の採用)です。そして、10項目に「知識及び技術又は技術の向上に関する取組の状況」が追加されました。
ところで、その他審査項目W点(社会性等)に係る評点全体の最高点は1,996点で、最低点は△1,995点です。P点換算にすると、1,996点×0.15=299点になります。社会性評価で満点をとれば、P点の内、Wが299点ということです。
今回の改正は、P点299点の内、1.5点アップする改正です。P点換算で1.5点のアップをどう捉えるかは、それぞれの企業判断により様々でしょう。1点差を争う企業にとっては死活問題でしょうし、CPDとCUUSにかける費用対効果を考えると企業の費用負担も大きいと思います。たかが1.5点、されど1.5点です。
いずれにせよ、経審のP点だけの問題ではなく、企業の繁栄発展と各人のレベルアップになりますから、積極的に取り組まれることを望みます。