1.概 要

白色申告をされている個人業者に、貸借対照表の添付が殆どありません。青色申告者でも、貸借対照表がないケースもあります。

情報不足で、財務諸表を作成するのに困る場合がありますね。こういう状態で、どのようにして「貸借対照表」を作成するのか? 会員の方から何度も質問を受けました。

結論から書きます。

お客さんから、貸借対照表に関する情報をいただいて作成するしかありません。

2.残高確定の仕方

貸借対照表「以下、B/Sという」の左側から順番に処理していきます。つまり、流動資産から一つひとつ埋めていきます。次の順番で各科目の金額を決めていってください。

① まず、左側の資産項目の金額を確定させます。これで資産合計が確定し、これは動かすことができません。

② 次に、流動負債と固定負債の金額を確定させます。これで負債合計が決まります。

③ 資産合計-負債合計=純資産合計になります。純資産合計が確定し、これで貸借の合計が一応合うわけです。とりあえず、左と右の合計が一致します。

④ 「純資産の部」の合計が確定したので、その中身の項目を埋めていきます。ここが最大のポイントになります。

事業主利益は、損益計算書から自動的に同じ額が埋まります。次に、事業主貸勘定を埋めます。これは事業主の生活費ですから、1年分を把握して埋めます。

そして、期首資本金を確定させます。前年のB/Sがある時は、前年の「純資産合計」の額を今年の期首資本金にもってきます。前年の数字がなく初めてB/Sを作成する場合は、年初の元入額をお客さんに尋ねます。アバウトでもかまいません。

最後に数字調整をします。白色申告者で数字調整をするところは、この事業主借勘定しかありません。

つまり、期首資本金+X部分(事業主借)-事業主貸+事業主利益=純資産合計ですから、X部分の金額は自動的に逆算されます。

それでは、順番に各科目の残高をどのようにして決めていくのか説明します。

3.各科目の金額を把握する

①現金預金

12月末日の当座預金や普通預金、積立預金などの残高を確認。現金の手元有高もチェック。

②受取手形

工事代金で手形をもらっていたら、12月末に手持手形の残高を記入。つまり、期日未到来の手形残高を把握します。既に割引や裏書した手形は期日が未到来でも、この受取手形残高に含めません。

③完成工事未収入金

12月末現在で工事代金を請求したが、お金をもらっていない未収分の合計を記入します。

④有価証券

期末にあれば、購入価格で書きます。

⑤未成工事支出金

簡単に言えば、仕掛工事の原価部分です。工事の注文を請け、期末までに仕事をスタートさせた工事原価のこと。未だ完成をしていないので請求書を発行できません。また出来高で請求するにしても、その段階まで至っていない場合に、既に支出(消費)している、その工事に係る材料代や外注工賃、現場経費の合計額です。

⑥材料貯蔵品

未成工事支出金とは切り離して考えてください。

工事に使う材料を購入したが、受注した工事には100個でいいが、まとめて購入すれば安いので、500個まとめて買った場合に400個は倉庫に残りますね。この400個分の購入金額が材料費の在庫になります。あくまでも12月末で計算します。

この場合の100個分が、既に受注工事に消費していますので、その工事が未成工事ならば、未成工事支出金の材料費になるわけです。

貯蔵品も材料と同じような理屈で、材料以外の消耗品などが残った状態です。

物品販売業の在庫と同じで、決算末に棚卸しをしますね。あの感覚です。

⑦有形固定資産

建物・構築物、機械・運搬具、工具器具・備品などの有形固定資産は、購入した日から期末までの減価償却費を計算して、該当年度の12月末の「未償却残高額」をもってくることになります。

白色の場合は、定額法で減価償却費を計算します。購入価額は、お客さんから情報を得て、間違いのない償却額の計算をしましょう。

あくまで事業用に供している有形固定資産ですから、プライベート的な固定資産は原則含みません。

⑧土地・建設仮勘定

土地も購入価額で書いてください。土地は減価償却できません。事務所や倉庫など事業用に供している土地が原則です。

建設仮勘定に載せる金額は、まだ完成していない事業用建物の建築に支出した金額を載せます。また、建物を購入する場合の手付金や中間金も、この科目で処理します。建物が完成すれば、建物科目などに振り替えます。

⑨破産債権・更正債権等

得意先が破産などで、回収できる債権がある場合は、この科目で処理します。

⑩支払手形

仕入代金や外注費の工事未払金を、自己手形を発行して支払いした場合に発生してくる科目です。

12月末現在で、落札期日が到来していない支払手形の合計額を計上します。

⑪工事未払金

12月末現在で、仕入代金や外注費の未払金がある場合に、その合計額を載せることになります。ちょうど、完成工事未収入金と反対になる科目です。

12月末で、工事関係の請求書がきているが、支払が翌年になってしまったものが、これに該当します。

⑫短期借入金・長期借入金

12月末現在の借入金の残高を書きます。

短期借入金は、翌日の1月1日から1年以内に返済する借入金の残高です。1年以内に返済できない、つまり1年を超えるような借入金は、長期借入金になります。

事業に関係ある借入金について計上します。

⑬未払金

工事関係以外の未払金です。12月末で、一般経費などの請求書がきているが、支払が翌年になってしまったものが、これに該当します。