JVの会計処理は、スポンサー会社とサブ会社との会計処理に分けられるが、その会計処理に本質的な相違はなく、その内容は、各構成員がその出資割合によって完成工事高および工事原価の発生を記録することにある。

サブ会社は、スポンサー会社から出資金の請求を受けとったつど支払い、スポンサーから送られてくる原価明細によって会計処理をすることになる。

スポンサー会社は、資材の購入先や下請先に対する支払処理とサブ会社に対する出資金の請求処理の記録が主な会計処理の対象となる。

 

JVの会計処理方法には、次の2つの方法がある。

① JV会計を独立会計単位として設定して整理する方法

② JVのスポンサー企業の中に取り込むが、その会計システムの中で独立性を確保していく方法

わが国では、②の方式が多いとされているが、企業整理の原則は、JVの会計に独立性を確保することである。JVの会計整理に関して構成員間で不透明性や不平等に関する不信や不満があってはならない。十分に本旨を生かす会計整理を実施する義務があると理解しなければならない。

 

〚説例〛

以下、一般的な会計処理を、説例で解説する。

説例の基礎データ

① JVの構成会社

甲社(スポンサー) 出資割合 60%

乙者(サブ)    出資割合 40%

(決算期は両社とも1年間である)

② JVの工事内容

工事契約高 10,000千円

工事原価   8,000千円

(注)計算の簡素化のため消費税は考慮しない。

 

1.JVを独立会計とした場合(JV独立会計方式)

① 口座の開設:JVで使用する口座を開設した。

JV JV名義の口座を開設 仕訳なし
構成員(甲社) 仕訳なし
構成員(乙社) 仕訳なし

 

② 工事前受金の受入れ:工事に係る前受金3,000千円を受け取った。

JV 現金預金 3,000 /未成工事受入金 3,000
構成員(甲社) 仕訳なし
構成員(乙社) 仕訳なし

 

③ 前受金の分配:上記②の前受金を構成員に分配した。

JV 甲社出資金 1,800 /現金預金 3,000

乙社出資金 1,200

構成員(甲社) 現金預金 1,800 / 未成工事受入金 1,800
構成員(乙社) 現金預金 1,200 / 未成工事受入金 1,200

 

④ 原価の発生:工事原価8,000千円が発生しJVは原価を支払うため、各構成員に請求した。

JV 未成工事支出金 8,000 / 工事未払金 8,000
構成員(甲社) 未成工事支出金 4,800 / 工事未払金 4,800
構成員(乙社) 未成工事支出金 3,200 / 工事未払金 3,200

 

⑤ 現金による出資:上記④の原価のうち6,000千円を支払うため、構成員各社が出資した。

JV 現金預金 6,000 / 甲社出資金 3,600

乙社出資金 2,400

構成員(甲社) 工事未払金 3,600 / 現金預金 3,600
構成員(乙社) 工事未払金 2,400 / 現金預金 2,400

 

⑥ 現金による支払:JVは上記⑤の資金により支払を行った。

JV 工事未払金 6,000 / 現金預金 6,000
構成員(甲社) 仕訳なし
構成員(乙社) 仕訳なし

 

⑦ 手形による出資:上記④の原価のうち2,000千円を支払うため、構成員各社が手形により出資した。

JV 出資手形 1,2000 / 甲社出資金 1,200

出資手形   800 / 乙社出資金  800

構成員(甲社) 工事未払金 1,200 / 支払手形 1,200
構成員(乙社) 工事未払金  800 / 支払手形  800

※JVでは、手形の振出ができないことから、実務上は、スポンサーが代表して手形を作成し、それをJVの支払に充てることが多い。

 

⑧ 手形による支払:JVは上記⑦の手形により支払を行った。

JV 工事未払金 2,000 / 出資手形 1,200

出資手形  800

構成員(甲社) 仕訳なし
構成員(乙社) 仕訳なし

 

⑨ 手形の決済:上記⑧の手形が決済された。

JV 仕訳なし
構成員(甲社) 支払手形 1,200 / 現金預金 1,200
構成員(乙社) 支払手形  800 / 現金預金  800

 

⑩ 工事の完成及び引渡し:工事が完成し、発注者に引き渡した。

JV 完成工事原価   8,000 / 未成工事支出金 8,000

未成工事受入金  3,000 / 完成工事高 10,000

完成工事未収入金 7,000

構成員(甲社) 仕訳なし
構成員(乙社) 仕訳なし

 

⑪ JV会計の清算:JVの決算を行った。

JV 完成工事高 10,000 / 完成工事原価 8,000

甲社出資金  3,000 / 未払分配金  7,000

乙社出資金  2,000

構成員(甲社) 未成工事受入金  1,800 / 完成工事高 6,000

完成工事未収入金 4,200

構成員(乙社) 未成工事受入金  1,200 / 完成工事高 4,000

完成工事未収入金 2,800

 

⑫ 請負代金の清算:請負代金のうち残額が入金され、構成員に分配した。

JV 現金預金  7,000 / 完成工事未収入金 7,000

未払分配金 7,000 / 現金預金     7,000

構成員(甲社) 現金預金 4,200 / 完成工事未収入金 4,200
構成員(乙社) 現金預金 2,800 / 完成工事未収入金 2,800

 

 

⑬ 口座解約と利息の処理:JVで使用した口座を解約し、預金利息300千円を受け取り各構成員に分配した。

JV 現金預金  240 / 受取利息 300

仮払源泉税  60 /

受取利息  300 / 現金預金  240

仮払源泉税  60

構成員(甲社) 現金預金  144 / 受取利息 180

仮払源泉税  36

構成員(乙社) 現金預金  96 / 受取利息 120

仮払源泉税 24

 

参考:工事施工中に決算を迎えた場合

JV 甲社出資金 ××× / 未成工事支出金 ×××

乙社出資金 ×××

構成員(甲社) 仕訳なし
構成員(乙社) 仕訳なし

 

 

2.JVを独立会計としない場合(スポンサーの会計処理に取り込んで処理する方式)

① 口座の開設:JVで使用する口座を開設した。

構成員(甲社) 仕訳なし
構成員(乙社) 仕訳なし

 

② 工事前受金の受入れ:工事に係る前受金3,000千円を受け取った。

構成員(甲社) 現金預金 3,000 / 未成工事受入金 1,800

/ 預り金(JV)   1,200

構成員(乙社) 仕訳なし

 

③ 前受金の分配:上記②の前受金をサブに分配した。

構成員(甲社) 預り金(JV) 1,200 / 現金預金 1,200
構成員(乙社) 現金預金 1,200 / 未成工事受入金 1,200

 

④ 原価の発生:工事原価8,000千円が発生し、請求原価を支払うため、JV(スポンサー)はサブに請求した。

構成員(甲社) 未成工事支出金 4,800 / 工事未払金 8,000

立替金(JV)     3,200

構成員(乙社) 未成工事支出金 3,200 / 工事未払金 3,200

 

⑤ 現金による出資:上記④の原価のうち6,000千円を支払うため、サブが出資した。

構成員(甲社) 現金預金 2,400 / 立替金(JV)2,400
構成員(乙社) 工事未払金 2,400 / 現金預金 2,400

 

⑥ 現金による支払:JVは上記⑤の資金により支払を行った。

構成員(甲社) 工事未払金 6,000 / 現金預金 6,000
構成員(乙社) 仕訳なし

 

⑦ 手形による出資:上記④の原価のうち2,000千円を支払うため、サブが手形により出資した。

構成員(甲社) 受取手形 800 / 立替金(JV) 800
構成員(乙社) 工事未払金  800 / 支払手形  800

※JVでは、手形の振出ができないことから、実務上は、スポンサーが代表して手形を作成し、それをJVの支払に充てることが多い。

 

⑧ 手形による支払:JV(スポンサー)は上記⑦の手形により支払を行った。

構成員(甲社) 工事未払金 2,000 / 支払手形 1,200

受取手形  800

構成員(乙社) 仕訳なし

 

⑨ 手形の決済:上記⑧の手形が決済された。

構成員(甲社) 支払手形 1,200 / 現金預金 1,200
構成員(乙社) 支払手形  800 / 現金預金  800

 

⑩ 工事の完成及び引渡し:工事が完成し、発注者に引き渡した。

構成員(甲社) 完成工事原価   4,800 / 未成工事支出金 4,800

未成工事受入金  1,800 / 完成工事高 6,000

完成工事未収入金 4,200

構成員(乙社) 完成工事原価   3,200 / 未成工事支出金 3,200

未成工事受入金  1,200 / 完成工事高 4,000

完成工事未収入金 2,800

 

⑪ JV会計の清算:JVの決算を行った。

構成員(甲社) 仕訳なし
構成員(乙社) 仕訳なし

 

⑫ 請負代金の清算:請負代金のうち残額が入金され、サブに分配した。

構成員(甲社) 現金預金 7,000 / 完成工事未収入金 4,200

預り金(JV)     2,800

預り金(JV)2,800 / 現金預金 2,800

構成員(乙社) 現金預金 2,800 / 完成工事未収入金 2,800

 

⑬ 口座解約と利息の処理:JVで使用した口座を解約し、預金利息300千円を受け取りサブに分配した。

構成員(甲社) 現金預金  240 / 受取利息   180

仮払源泉税  36 / 預り金(JV) 96

預り金(JV) 96 / 現金預金  96

構成員(乙社) 現金預金  96 / 受取利息 120

仮払源泉税 24

 

参考:工事施工中に決算を迎えた場合

構成員(甲社) 仕訳なし
構成員(乙社) 仕訳なし

 

JVを独立会計としない場合の会計処理としては、上記のような取引の都度スポンサーとサブの持分に分ける処理(逐次持分把握法)と、取引時はスポンサーがJV全体を処理しておき、期末にスポンサーとサブの持分に分ける処理(決算持分把握法)がある。

 

[入門] 建設業会計の基礎知識からの引用