建設業については、戦後まもなく「企業会計原則」の公表とほぼ同時期(昭和24年)に、「建設業法」、「建設業法施行規則」が制定されたが、この施行規則の中に、登録申請書類として「財務諸表」の添付が義務付けられ、いわゆる建設業法下の会計制度がスタートした。

昭和25年には、全国建設業協会の傘下に「建設工業経営研究会」が設置され、中央建設業審議会が同研究会の定めた「建設業財務諸表準則」を建設業法に基づく会計報告書として位置付けることを建議した。また、昭和26年には、施行規則が「建設業財務諸表様式」を規定したことから、建設業者は、他の産業と異なった固有の財務諸表を作成、公表する会計制度が本格的に確立したのである。

このような建設業の会計に係る特例の措置は、現在まで引き継がれており、伝統的に商法会計(現在の会社法会計)と証取法会計(現在の金融商品取引法会計)に対する建設業会計の関係は、次のように理解される。

・会社法 会社計算規則 第118条第1項

・金融商品取引法 財務諸表等規則

「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」第2条

別記に掲げる事業を営む株式会社又は指定法人が、当該事業の所管官庁に提出する財務諸表の用語、様式及び作成方法について、特に法令の定めがある場合には、当該事業を営む株式会社又は指定法人が法の規定により提出する財務諸表の用語、様式及び作成方法については、(中略)その法令又は準則の定めによるものとする。
別記-建設業(建設業法、建設業法施行規則)

現在、建設業法により建設業の許可を申請するものは、同法第6条(許可申請書の添付書類)の定めにより所定の「財務諸表」を添付しなければならないが、さらに、許可に係る建設業者は、同法第11条(変更等の届出)において、毎会計期間における「財務諸表」を毎事業年度経過後4か月以内に、国土交通大臣または都道府県知事に提出しなければならないことになっている。

 

建設業法下の会計を具体的に規定する「建設業法施行規則」の概略は次のとおりである。

1.財務諸表の提出を必要とする時

① 建設業許可の申請の時(新規許可は添付、更新許可は添付不要)

② 毎営業年度の変更等事項の届出の時

③ 経営事項審査の受審申請の時(通常経審は不要、特殊経審時は一部添付)

 

2.財務諸表の種類

① 貸借対照表

② 損益計算書(完成工事原価報告書を含む)

③ 株主資本等変動計算書

④ 注記表

⑤ 附属明細表(資本金1億円超又は負債総額200億円以上の場合)

 

3.財務諸表の様式

財務諸表の様式については、建設業法施行規則に次のような規定が定められている。

① 様式15号   貸借対照表

② 様式16号   損益損益書

③ 様式17号   株主資本等変動計算書

④ 様式17号の2  注記表

⑤ 様式17号の3  附属明細表

また、以上のような別記様式における「勘定科目」の分類とその各々の定義については、「建設業法施行規則別記様式第15号及び16号の国土交通大臣の定める勘定科目の分類を定める件」として、国土交通省の告示が発令されている。

この告示における勘定科目の定義は、貸借対照表と損益計算書の他、完成工事原価報告書の項目にも及んでいる。

以上のように、建設業会計の実務においては、一般の会計基準の理解に加えて、建設業下にある会計諸規則にも精通しておく必要がある。