工事原価には、個別の工事に直接要した「直接原価」と、どの工事で発生したか特定できない「間接原価」があります。未成工事支出金(仕掛工事)を算出する場合には、直接原価は比較的把握しやすいが、間接原価も一定の配賦基準によって配賦する必要があります。

直接原価は、その工事に直接要した材料費、労務費、外注費、現場経費がありますが、間接原価には、例えば、複数の工事を管理する現場担当者の人件費、複数の工事を管理する現場事務所の経費、各工事に共通して発生する労務費があります。また、直接原価を特定できない材料費、消耗品費、仮設材料費、減価償却費などがあります。

これらの配賦基準ですが、価格基準、時間基準、数量基準、売上基準があります。

価格基準は、直接原価を基に算出する方法です。各工事ごとの直接経費が簡単に算出されます。その合計額から各工事の割合(%)が出ます。その割合を間接原価に掛けていく方法です。

配賦基準については、どの基準を採用するか検討されて、決めた基準を継続して採用する必要があります。

この間接原価(共通間接費)を、完成工事原価と未成工事原価に配賦する必要があります。税務調査でも、間接原価がよく問題になり、間接原価の配賦を忘れないようになさってください。

大企業や中企業は、建設業会計で処理されていますが、小零細企業の大半は、出来高で工事代金を毎月請求しています。その会計処理は、商業簿記や商的工業簿記で記帳されているのが現実です。ゆえに、毎月の会計処理に「未成工事支出金」という勘定科目を使いません。直接、材料費や外注費、現場経費の勘定で処理されています。この場合でも、決算期末に仕掛工事(未成工事支出金)を算出する時には、間接原価(共通間接費)を一定の配賦基準で、完成した工事と仕掛工事に配賦することがポイントになります。

商業簿記で処理しようと、建設業会計で処理しようと、大事なことは、決算期末の仕掛工事を適正に処理すれば問題ありません。つまり、直接原価はもちろんのこと、間接原価を完成した工事と仕掛工事に間違いなく配賦することです。特に、間接原価の配賦は忘れがちになりますので、要注意です。