電子帳簿等保存制度は、税務上保存等が必要な「帳簿」や「領収書・請求書・決算書など(国税関係書類)」を、紙ではなく電子データで保存することに関する制度です。また、記録の改ざんなどを防止する観点から、保存時に満たすべき一定の要件が電子帳簿保存方で定められています。

 この制度には、「電子帳簿等保存(希望者のみ)」、「スキャナー保存(希望者のみ)」、「電子取引データ保存(法人・個人事業者は対応が必要です)」の三つの制度があります。

 令和6年1月から義務化されていますが、「電子帳簿等保存(希望者のみ)」、「スキャナー保存(希望者のみ)」の二つに関しては、希望者のみ(利用したい方が利用する制度)になっていますので、現在のところ強制ではありません。利用する利用しないは企業の自由ですので、従来どおりの紙ベースでの対応が可能です。

 しかし、「電子取引データ保存」は、法人・個人事業者は対応が必要ですが、あくまでも電子取引をする場合であって、電子取引をしない場合は対応する必要がありません。例えば、大手会社は電子取引を開始していますが、個人や零細企業に対しては、従来どおり、たいていは紙ベースで請求書を郵送してくれますので、個人や零細企業が電子取引をしない限り、「電子取引データ保存」の対応は必要ありません。

 もっとも、取引先等(相手側)が電子取引を始めたので、こちら側も電子取引を始めた場合は、必ず「電子取引データ保存」の対応が必要になります。

 つまり、電子取引をしない限り、電子帳簿保存法に対応する必要がないと言えます。ところが、相手側が紙ベースで適格請求書や領収書を発行してくれない場合に、どうによう対応するかという問題が発生します。

 例えば、アマゾンで商品や本を購入しカード決済した場合は、アマゾン側は紙ベースで適格請求書や領収書を発行してくれません。つまり、アマゾンは電子取引をしているので、購入した者も電子保存をしなければと思いますが、必ずしもその領収書等データをダウンロードして保存しなくても良いことになっています。

 これに関しては、電子帳簿保存法のQ&A(一問一答)に係る「お問合せの多い質問」の追2で回答されています。但し、この取扱いは「ECサイト提供事業者が、電子取引に係る保存義務者(物品の購入者)において満たすべき真実性の確保及び検索機能の確保の要件を満たしている場合に受けることができます」となっていますが、アマゾン等の大手会社はこの要件を満たしていると思います。つまり、購入者は「電子取引データ保存」をしなくても良いと言うことです。電子帳簿保存法に違反にならないということです。また、電力会社や携帯電話会社等も電子取引ですが、取扱いはアマゾンと同様です。

 さらに、カード決済で購入される場合は、適格請求書や領収書を必ずもらってください。但し、クレジットカードの利用明細が一定の要件を満たしている場合は、領収書の代わりになります。「一定の要件」とは、クレジットカードの利用明細に、領収書に通常記載される一定事項の情報(発行者、日付、金額、宛名、取引の内容など)が記載されていることです。

領収書をもらい忘れた場合や領収書を紛失した場合、また領収書を発行してもらえなかったなどの事情がある場合には、一定の要件を満たしたクレジットカードの利用明細が、領収書の代わりとして利用できますので便利です。

 いずれにしましても、近い将来には、電子帳簿保存法を遵守して、ペーパーレスを徹底しなければならない時期がもうそこまで来ています。スキャナ保存をする場合には、様々なルールを満たして保存するために、対応ソフト等を使用することになります。国税庁で紹介されているのが「JIIMA認証」ソフトです。毎月一定の費用がかかります。国税庁のHPでご確認ください。

 完全ペーパーレスになれば、市販ソフト代金程度は浮くと考えますが、なかなか切り換えが難しいでしょう。しかし、これに対応していかなくてはなりません。