1.概要(理屈)

車は故障したり壊れたりすることがあります。また、長く使用するための維持や管理に要する費用も発生します。これらは、原則として「修繕費」となります。原則がつきます。原則として経費に落とすことができます。

一方、車に改良を加えたり、新しい機能を追加したりすることにより、使用している車の価値を高めたり、耐用年数が延びたりする場合は、修繕費にならず「資本的支出」に該当し、車両運搬具に計上して、減価償却をしていくことになります。

例えば、古い車でオーバーホール(総点検)した時に、エンジンまで付け変えることがあります。同じ馬力のエンジンを交換するなら原状回復になり、修繕費です。しかし、購入時以上の馬力エンジンに交換すれば性能が上がり、それは資本的支出に該当します。現実的には古いエンジンがなく、最新式を装着するかもしれません。その時の判断がむずかしく、修繕のウェイトが高ければ、修繕費でも良いでしょう。判断に悩む場合は、次に説明する税法上の「形式基準」で判断するしかありません。

現状維持や原状回復は 修繕費
(性能向上)

使用可能期間が延長

資産価値が増加

(資本的支出)

車両運搬具に計上して減価償却していく

 

2.修繕費と資本的支出の区分は、現実にむずかしい

実際には、車両の現状回復と機能向上を一度の修繕で同時に行う場合も多く、個別にみても修繕費と資本的支出のどちらに該当するか悩むケースが多くあります。そこで税法では、次のような判断の指針を示しています。これを「形式基準」と言います。この「形式基準」を使って、修繕費にするか車両運搬具にするか、決めてください。

① 1つの修理や改良などの金額が「20万円未満」である場合→修繕費

※文句なしに修繕費になります。

② 1つの修理や改良などが3年以内くらいの周期で行われるものである場合

→修繕費

※20万円未満や3年周期の場合は、文句なしで修繕費になりますが、20万円以上や周期が決まっていない場合で、「明らかに資本的支出」に該当する場合は車両に計上します。明らかに資本的支出とは、エンジンを置き換えたり、新しいカーナビを付けたりした場合に該当します。

 

③ 明らかに修繕費に該当する場合

修理・改良などの金額が60万円未満、または、該当する車の前期末の取得価額の10%相当額以下である場合→修繕費

※明らかに資本的支出ではなく、修繕費なら60万円未満は文句なしに修繕費になります。10%相当額というのは、例えば前期にA車両を800万円で購入して、その修繕費が75万円なら、800万円の10%相当額以下ですから、75万円が修繕費になります。

いずれにしても、明らかに修繕費に該当すれば、60万円未満なら修繕費になります。

以上の「形式基準」を一覧表にします。

内    容 判  定
1 20万円未満なら 修繕費
2 おおむね3年以内の周期で発生する費用か 修繕費
     ↓
3 明らかに資本的支出の場合は

(20万円以上)

車両に計上
4 明らかに修繕費の場合は

(60万円未満、または取得価額の10%以下)

修繕費
5 60万円以上、取得価額の10%を超える場合 車両に計上

 

3.車検費用

貨物運送事業者は、毎年、車検費用が発生します。車検費用は修繕費になります。車検に伴う費用も該当科目の費用です。しかし車検をする時に、車検に関係なく、別に機能を高める装置をつけたり、新しくカーナビを付けますと資本的支出に該当し、その部分は車両に計上しなければなりません。