大工、左官、とび職等のいわゆる一人親方に支払う報酬は、外注費になるのか、給与になるのか。その法令解釈通達が、平成21年12月17日に公表された。また、その留意点が質疑応答形式により別冊にまとめられている。その概要は次のとおりである。

請負契約に基づく対価であるのか、又は、雇用契約に基づく対価であるのかの区分が明らかでないときは、次の事項を総合勘案して判定することになる。

1.作業の代替性

他人が代替して業務を遂行すること又は役務を提供することが認められるかどうか。

これは、一人親方が作業に従事できない時に、代わりに誰かを手配してその作業を継続することが可能か、どうかということである。可能な場合は事業所得になり、建設業者は外注費として経理処理することになるが、その場合に注意すべきことがある。

他人の代替が認められる場合 親方が手配し、親方が代替者の報酬を払う。
他人の代替が認められない場合 建設業者が手配し、代替者の報酬を払う。

 

2.時間的拘束性

報酬の支払者から作業時間を指定される、報酬が時間を単位として計算されるなど時間的な拘束(業務の性質上当然に存在する拘束を除く。)を受けるかどうか。

時間的拘束性を受けるか、どうかで判断する。時間的拘束を受けない場合は事業所得になり、受ける場合は給与になる。

時間的拘束を受ける例

①予定作業以外の作業にも従事する。

②予定外の作業をした場合の報酬が加算されている。

時間的拘束を受けない例

①予定作業が終われば、早く切り上げることができる。

②作業時間を自らが決定できる。

 

3.指揮監督

作業の具体的な内容や方法について報酬の支払者から指揮監督(業務の性質上当然に存在する指揮監督を除く。)を受けるかどうか。

指揮監督を受ける場合は給与となる。受けない場合は事業所得になる。

指揮監督を受ける例 ①現場監督等から、作業の具体的内容・方法等の指示がなされている
指揮監督を受けない例

①指図書等の交付によって、通常注文者が行う程度の作業指示がなされている。

②他職種との工程の調整や事故の発生防止のために、作業の方法等の指示がなされている。

 

4.危険負担

まだ引渡しを了しない完成品が不可抗力のため滅失するなどした場合において、自らの権利として既に遂行した業務又は提供した役務に係る報酬の支払を請求できるかどうか。

危険負担の請求ができる場合は給与になり、その危険負担は建設業者が負担することになる。反対に危険負担の請求ができない場合は事業所得になり、親方が危険負担を被ることになる。

請求できる例 完成品が、引渡し前に台風により破損した場合であっても、報酬の支払を請求できる。(給与)危険負担なし
請求できない例 完成品が、引渡し前に台風により破損した場合であっても、報酬の支払を請求できない。(事業所得)危険負担あり

 

5.材料等の供与(提供)

材料又は用具等(くぎ材等の軽微な材料や電動の手持ち工具程度の用具等を除く。)を報酬の支払者から供与されているかどうか。

材料や用具が、建設業者から提供されていれば給与になる。提供されていない場合は事業所得になる。

供与されている例 手持の大工道具以外は、建設業者が所有する用具を使用している。
供与されていない例 建設業者が所有する用具を使用せず、親方が所有する据置式の用具を建設作業等に使用している。

以上が、法令解釈通達である。

 

作業従事者の代替性では、親方が手配して、その代替者の報酬を支払っている場合は、事業所得になり、建設業者は外注費扱いになる。

時間的拘束があれば給与扱いになり、時間的拘束がなければ事業所得(外注費)である。

指揮監督を受けているなら給与扱いになり、指揮監督を受けていない通常の指図書に基づく程度なら事業所得(外注費)になる。

成果物の対する危険負担を被る場合には事業所得になり、危険負担を被らない場合は給与となる。

材料等の提供(供与)がある場合は給与になる。親方が自ら用意してする場合は事業所得になる。

以上の5点を総合的に勘案して判断することになっている。

 

例えば、時間的にも拘束され、指揮監督も受け、材料や用具も提供されていれば、給与扱いになり、建設業者は源泉所得税を徴収しなければならない。

時間的拘束もない、指揮獲得も受けていない、材料や用具の提供も受けていないなら、事業所得になる。その場合には、建設業者は外注費で経理処理する。外注費なので消費税が課税され、消費税を計算する時に控除の対象になる。