会社法上の取締役に就任せず、執行役員の役職で「経営業務の管理責任者」になれる。つまり、履歴事項証明書(会社の謄本)の取締役に就任せず、執行役員の役職で経営業務の管理責任者になり、建設業の許可申請が可能になる。最近、このようなケースの建設業における新規許可申請を経験した。主な内容は、次のとおりである。
まず、前提条件が「取締役会設置会社」であること。この設置がないと、執行役員制度は成立せず、取締役会設置会社が前提要件である。もっとも、執行役員は取締役会設置会社でなくとも自由に任命できるが、ここでいう取締役会設置会社が前提要件になっているのは、建設業許可のしばりに過ぎない。また、「執行役」と「執行役員」は異なる。執行役は、会社法上の役員である。執行役員は、会社法上でいう役員ではなく、部長職等の従業員である。
次に、内部書類として何点かの書類が求められる。例えば、定款、会社の組織図、役員職務規程、取締役会規則、執行役員規程、業務分掌規程、取締役会議事録、執行役員を命ずる辞令書などである。また、各種規程の内容が重要である。つまり、執行役員が「経営業務の管理責任者」の補佐経験が分かる内容のものでなければならない。ここがポイントである。これらの許可申請は、大阪府の場合、事前協議から始まり、執行役員制度が整備されていることが確認される。その後、許可申請に及ぶことになる。
上記の詳細は、「建設業許可事務ガイドラインについて(平成13年4月3日 国総建第97号)」に記述されている。
「取締役会設置会社において、取締役会の決議により特定の事業部門に関して業務執行権限の委譲を受ける者として選任され、かつ、取締役会によって定められた業務執行方針に従って、代表取締役の指揮及び命令のもとに、具体的な業務執行に専念した経験をいう。また、当該事業部門は、許可を受けようとする建設業に関する事業部門であることを要する」と定義している。つまり、具体的な業務執行に専念した経験が重要であり、その内容が反映された執行役員規程などでなければならない。
具体的な内容とは、「許可を受けようとする建設業に関する建設工事の施工に必要とされる資金の調達、技術者及び技能者の配置、下請業者との契約の締結等の経営業務全般について、従事した経営をいう」とされる。資金の調達、技術者の配置、下請契約の締結がキーワードであり、取締役の補佐経験である。ゆえに、業務分掌規程には、これらの内容が外せない。また、執行役員の「経営業務の管理責任者」は、役員に次ぐ補佐経験であり、あくまで「経営業務の管理責任者に準ずる地位」である。建設業許可の様式7号でいう「ロ」該当者であり、取締役の「経営業務の管理責任者」である「イ」該当者ではない。
今回のケースは、親会社が相当規模の会社であり、その子会社が建設部門を立ち上げるということで、お手伝いをさせていただいた。新規許可の数少ない例である。