損益計算書の利益には、売上総利益、営業利益、経常利益、税引前利益、税引後の当期利益があります。

 売上総利益とは粗利益のことで、売上高から売上原価を引いた利益です。営業利益は、粗利益から販売費及び一般管理費を引いた利益です。経常利益は、営業利益から主に支払利息を引いた利益です。税引前利益は、経常利益から主に臨時的に発生する特別利益や特別損失を加減した後の利益です。

 経営分析(Y点)で関係する利益は、「売上総利益(粗利益)」「営業利益」と「経常利益」の3つです。税引前利益ではありません。1期ぐらい税引前利益が赤字でも、気にする必要はありません。

 例えば、営業利益と経常利益が黒字なら、焦げ付いた未収金を損失に落とし、赤字決算にします。思い切って貸倒金を「特別損失」で処理して、赤字決算にしましょう。いつまでも、貸借対照表に死んだ未収金を置いておくより、筋力体質の貸借対照表にすることです。

 焦げ付いた未収金だけではありません。利益を生まない遊休資産や大幅にある含み損を抱えた土地があれば売却して、カネ回りをよくしましょう。不良在庫、使わない機械や工具も特別損失に落とすことです。

 土地を売れば、一時的に大幅な固定資産売却損が出て大赤字になりますが、しばらく法人税等を払う必要もなく、カネ回りがよくなります。固定資産売却損は「特別損失」なので、営業利益や経常利益に関係しません。金融機関対策も何ら問題ありません。むしろ、それを決断しない社長の経営センスが問われます。インフレの時代なら含み益もありますが、土地の価値が下がり含み損が大幅にある会社は、土地を売って、カネ回りをよくすることです。

2期も3期も続く赤字決算はよくありませんが、特別損失を計上して税引前利益を赤字にすることは、何ら悪いことではありません。むしろ、次期以降の貸借対照表が見違えるようによくなり、総資本利益率(ROA)が非常によくなります。

 総資本利益率は、経常利益を総資本で割った数値です。自社の総資本で、経常利益がいくらあったかをみる指標です。例えば10万円の土地を利用して100万円の利益を上げる会社と、100万円の土地で同じ100万円の利益を上げる会社では、前者の方が利益率が高いですね。経常利益は両社とも100万円ですが、総資本が違います。前者は10万円の総資本ですから、利益率は100万円÷10万円=1,000%で、後者は100万円÷100万円=100%です。これは極端な例ですが、「総資本利益率」は10%は欲しいところです。100万円の資本を投じたら10万円の経常利益がでないと、良い会社とは言えません。

 総資本利益率(ROA)は、今や世界標準となり、これからの企業の収益性がこの指標で判断されることを経営者として肝に銘じておいてください。
Return of Assets の頭文字をとってROA(ロアまたはアールオーエー)と呼ばれています。Assetsは資産のことです。
金融機関も、会社の判断をする時に、ROAを最も重視します。

 経審や経営分析の指標には、このROAはありませんが、この利益率が上がれば、当然に経審のP点やY点も自ずからアップします。

 上述の含み損を特別損失で処理し、赤字決算にすることを躊躇される経営者が多くいますが、この外科手術をしない限り、中長期的な経審アップや経営分析アップは望めません。

 一時的には、経審の「自己資本額と平均利益額(X2)」や経営分析の「利益剰余金」の指標が下がりますが、反対に上がる指標もあります。「営業キャッシュ・フロー」は大幅にアップし、カネ回りの良い会社になります。入札参加時のランクを維持することも大事でしょうが、カネ回りの方がもっと大事なことで、会社の命運がかかっていることを知ってください。