工事完成基準と工事進行基準については、工事契約に関する会計基準、運用指針に規定されている。

法人税法では、工期が1年未満か請負金額が10億円未満の工事については、原則、工事完成基準で収益を計上する。継続適用を要件に工事進行基準が認められる場合もある。一方、請負金額が10億円以上の工事については、長期大規模工事の適用を受け、法人税法64条に次のように規定されていて、強制的に工事進行基準で収益を計上しなければならい。但し、次の3つの要件すべてに該当した場合に適用される。

平成20年度の改正により、次に掲げる要件のすべてに該当する長期大規模工事(赤字工事を含む)については、工事進行基準により各事業年度の収益及び費用の額を計算する。

⑴ 着手の日から当該工事にかかる契約において定められている目的物の引渡しの期日までの期間が1年以上であること(法人税法64条)

⑵ 請負金額が10億円以上の工事であること(法人税法施行令129条)

⑶ 契約において、請負金額の1/2以上が工事の目的物の引渡しの期日から1年経過後に支払われることにはなっていないこと(法人税法施行令129条)

つまり、法人税法では、工期が1年以上、請負金額が10億円以上、請負金額の1/2以上が引渡しの日から1年以内に支払いを受ける場合は、工事進行基準によって収益を計上しなければならない。引渡しの日から1年以内に最低でも半分の工事代金を受け取れる場合である。

上記のような法人税法の定めがあって、JV工事で、請負総額15億円で工期が2年の工事を受注した場合について、考えてみたい。

JV工事の場合、構成員ごとの契約によって成立し、又、利益や損失等がJV事業から各構成員に直接帰属されるものである場合には、長期大規模工事であるか否かの判定は、分配される請負金額による。

通常、出資割合によって請負金額が決まる。例えば、スポンサー側(A社)が80%、サブ側(B社)が20%とすると、請負金額はそれぞれ12億と3億になる。A社が10億円を超えるので、工事進行基準の強制適用になる。B社は10億円未満になり、工事進行基準の強制適用にはならない。

もし、この工事で大幅な赤字が計上され損失申告が予定されている場合には、要注意である。A社の請負金額は12億円になり工事進行基準が強制適用になり、損失申告が可能になる。しかし、B社の請負金額は3億円で工事進行基準が強制適用されないので、通常、工事完成基準の適用になり、工事が完成した時に損失申告をすることになるので、工事進行基準を適用して損失申告は認められないことになる。もっとも、継続適用を要件に工事進行基準が認められる場合もある。

10億円以上のJV工事で、大幅な赤字の時は要注意である。