令和元年10月1日に改正された「一般貨物自動車運送事業及び特定貨物自動車運送事業の許可申請事案の処理について(公示)」の中に、資金計画の事が記載されています。4つの項目が書かれています。順次、説明していきます。

 

1.所要資金の見積りが適切なものであること。

これに関しては、予定する事務所、車庫、車両台数、役員報酬、運行管理者の給与、整備管理者の給与、運転者の給与、事務員の給与、社会保険料、雇用保険料、労災保険料などの見積り金額が、適切である事を意味します。例えば、運転者の給与が極端に低い場合は、見積り金額が適切でないと判断され訂正を求められます。やはり、最低賃金制度がありますので、それ以上の金額を見積る必要があるでしょう。

また、常勤役員が3名いて、1名分の役員報酬しか計上されていない場合も、その理由を求められ、場合によっては訂正が入る場合があります。もっとも、兼業があり、運送業に専念する常勤役員が1名の場合は、妥当性があり認められます。他の2名の役員は、建設業等の兼業事業に専念される場合は、役員報酬2名分の計上は不要でしょう。

さらに、常勤役員1名が運行管理者、整備管理者を兼務される場合なら、運行管理者と整備管理者の給与額は不要になります。

ケースバイケースで、見積り金額が適切であるかどうか判断なさってください。

 

2.所要資金の調達に十分な裏付けがあること、自己資金が所要資金に相当する金額以上であること等資金計画が適切であること。

これに関しては「十分な裏付けがあること」になっています。つまり、運輸局は銀行の預金残高証明書を求めてきます。その金額は「自己資金が所要資金に相当する金額以上」となっていますので、例えば、所要資金が、2,500万円なら2,500万円以上の銀行残高証明書が求められます。

事業開始に要する資金に内容については、下記4に示すとおりです。

 

3.自己資金が、申請日以降許可日までの間、常時確保されていること。

これに関しては、上記2の裏付け(銀行残高額)が、許可申請日から許可日まで確保されている事であり、許可申請日から許可日までの、どの時点の銀行残高証明書を求められても、銀行預金残高を確保しておく事が重要になります。

具体的には、通常、第1回目は、許可申請日の銀行残高証明書が求められます。次に2回目の残高証明書は、法令試験合格後に運輸局から補正、補足書類の問合せが、行政書士の事務所に届きます。そこに2回目の銀行残高証明日が指定されていて、その指定日の残高証明書を取り寄せ、運輸局に提出する事になります。この際に、所要資金以上の残高証明がなければ、許可になりませんので、ご注意ください。

 

4.事業開始に要する資金について(所要資金)

下記⑴から⑹までの合計金額が所要資金になります。つまり、合計金額の銀行残高証明書が求められます。

⑴ 予定する車両について

① 購入する場合

分割払いの場合は、頭金及び1年分の割賦金。ただし、一括払いの場合は取得価格(消費税を含む)が必要資金になります。

② リース契約する場合

リース料の1年分が必要になります。

③ 既に予定する車両を自己所有されている場合は、その車両代金は含めません。例えば、既に所有している自家用トラックを予定する車両として計上する場合です。

 

⑵ 車両以外の固定資産を所有する場合

① 所有する場合

分割払いの場合は、頭金及び1年分の割賦金。ただし、一括払いの場合は取得価格(消費税を含む)が必要資金になります。

例えば、パソコンや車庫用の土地を購入する場合が、これに該当します。

② 借入する場合

賃借料(敷金、権利金、保証金等を含む)の1年分が必要資金になります。例えば、予定する車庫を賃借する場合、敷金、権利金、保証金を含み、1年分の車庫の地代が必要になります。また、事務所を賃借する場合も同様です。

 

⑶ 自賠責保険料

これに関しては、予定する車両を購入する場合は、事業用として自賠責保険料の1年分です。リース契約の場合の多くは、自賠責保険料はリース料に含まれていますので、計上する必要がありません。

 

⑷ 任意保険料

これに関しては、予定する全車両の任意保険料の1年分を計上します。リース車は、任意保険料は含まれていませんので、予定する全車両が対象です。気をつける事は、事業用としての任意保険料で、見積書の添付が求められます。

 

⑸ 施設賦課税

これに関しては、自動車税、自動車重量税の1年分です。環境性能割(自動車取得税)が必要資金になります。

リース車に関しては、自動車税が含まれている場合は、所要資金に含めなくてもよいです。環境性能割(自動車取得税)は、購入の場合に必要ですので、見積書等でチェックなさってください。

 

⑹ 運転資金について

これに関しては、人件費(社会保険料、雇用保険料、労災保険料を含む)の6ヶ月分で、役員報酬、運行管理者の給与、整備管理者の給与、運転者の給与、事務員の給与が該当します。あと、燃料費、油脂費、修繕費、その他経費のそれぞれ6ヶ月分が必要になります。

 

上記の所要資金を表にすると、下記のようになります。

◎ 事業開始に要する資金

人件費 役員報酬 月額×6ヶ月分
運転者 最低5人×月額×6ヶ月分
運行管理者 最低1人×月額×6ヶ月分
整備管理者 最低1人×月額×6ヶ月分
事務員 最低1人×月額×6ヶ月分
その他 最低1人×月額×6ヶ月分
賞与 給与月額×1回給与の何ヶ月分×支給回数×1/2
健康保険料 (役員報酬+給与手当)×事業主負担率
厚生年金保険料 (役員報酬+給与手当)×事業主負担率
雇用保険料 (役員報酬+給与手当)×事業主負担率
労災保険料 (役員報酬+給与手当)×事業主負担率
燃料 燃料費 月間走行㎞÷ℓ当たり走行㎞×ℓ当たり単価×6ヶ月分
油脂費 燃料費の3%を見込む。
修繕費 外注修繕費 1両月額×6ヶ月分×最低5両
自家修繕費・部品費 1両月額×6ヶ月分×最低5両
タイヤチューブ費 月間何本使用×1本〇〇円×6ヶ月分
車両費 車両購入費

⑴分割の場合は、頭金及び1年分の割賦金。

⑵一括払いの場合は、取得価格

車両リース料 リース料の1年分
施設費 施設購入・使用料

⑴土地・建物の購入の場合

①分割の場合は、頭金及び1年分の割賦金

②一括払いの場合は、取得価格

⑵賃貸の場合は、1年分の賃貸料(保証金等を含む)

その他 什器・備品費 取得価格
施設賦課税 自動車税、自動車重量税の1年分及び環境性能割
自賠責保険料 1年分
任意保険料 1年分
登録免許税 12万円
その他経費

旅費、会議費、水道光熱費、通信、運搬費、

図書印刷費、広告宣伝費等の6ヶ月分

合 計 この合計額が所要資金です。