地元信金は、面倒見もよく地域密着型の銀行です。だから、零細企業は地元信金1本に絞って取引をよくされています。つまり、1銀行主義です。これはこれでメリットがあり、会社が順調に利益をあげ、余剰金(現金)があれば問題ありません。
しかし、1銀行だけでお付き合いするということは、命を1銀行に預けているということです。法人の命も、保証をしている社長と家族の命も、同時に預けていることになります。建前と本音。経営者は、いつも両方を見る眼を養う必要があります。経営の鉄則です。
「貸せる条件」と「返せる条件」は違います。私の顧客が「銀行は返せると思って、お金を貸してくれたんだ」という言葉をよく聞きます。しかし、これは違います。銀行は、返済できる会社だと判断して、お金を貸してくれるのではなく、「貸せる」から貸しただけであって、銀行が「貸せる条件」と会社が「返せる条件」は違うのです。
銀行は、明らかにこれ以上融資をしたら返済は無理だろうと思える「経常利益」でも、赤字を出していなければ融資を検討してくれます。明らかに返済は無理だという以外は、融資をしてくれることが多々あります。これが銀行の体質です。なぜならば、保証協会付きの融資で全くリスクがなく、利息で儲けるからです。銀行は利息が売上ですから、一番リスクが少ない方法で利益を得ようとします。
その結果、借りた会社は、経営が余計に苦しくなっていきます。これ以上、借りれば返済できない可能性が高いにもかかわらず、当面の資金繰りを回すために、銀行が貸してくれるから借りてしまう。それで、さらに経営が苦しくなります。もし、銀行が融資をしなければ、銀行以外の方法を考えますが、下手に借りることができると、それで当面の資金繰りをしのぎ、根本的な経営改善を考えようとしません。このようなことを繰り返していると、経営は、ますます行き詰まるだけです。
これらと反対に、前向きな良い借金もあります。銀行の言いなりになるのではなく、将来の資金繰りを見越して、低金利の融資があれば利用された方が良いと考えます。但し、借りたお金に手を付けず貯金をします。そうすると、資産である預金が増えます。もちろん借入金も増えますが、預金が増えただけ、余裕を持って経営できますし、良い投資先があれば子どもを産んでくれますので、借入金利以上の利益率があれば、良い借金になります。
しかし、世の中の多くの経営者は、借りたお金をなし崩し的に消費されてしまいますので、いつまで経っても資金繰りがよくなりません。ここのところを辛抱されて、預金に手を付けないでください。これが良い借金の仕方です。
また、お金は銀行から借りるのではなく、政策金融公庫、小規模共済、倒産防止共済等を利用されて、これらから借りて、銀行には預金だけします。そうすれば、銀行の言い分を聞く必要ばなくなり、会社の自由に経営できます。こういう経営方針も貫いてください。