「にいちゃん、まだ若いね。」「ご両親は健在ですか?」

「はい、おやじもおふくろも元気です。」

「えぇ、うしろ盾やなぁ。」

「えぇ、うしろ盾?」

「お父さんもお母さんも、元気やということは、思いきって仕事に励めるやろ。」

「片方が病気で寝込んでいたら、にいちゃんの気持ちが半分そっちのほうへいって、仕事に全力投球できないやろ。」

「ご両親が元気ということは、それだけでも、ありがたいことや。感謝せなぁあかんでぇ。」

 いつもお世話になっている社長のお母さんから頂戴しました。

 32歳だった私は、「えぇ、うしろ盾」の意味がよく解りませんでした。お送りさせていただく車中での会話であったが、一生忘れられません。

 

 その社長さんのお母さんは、その後まもなく天国に召されましたが、折に触れ、そのお母さんのことを思い出します。そのたびに「えぇ、うしろ盾やなぁ」という言葉が蘇ってきます。

 私の両親も既にこの世にいませんが、この言葉を思い出すたびに、両親が健康であってくれたことに感謝しています。

 当時の私は、花粉症のかけらもなく自分の体のことは元より、両親の健康のことなど考えたこともない人間でした。ましてや、妻の健康も子供たちの健康も同様でした。自分がアレルギー体質になって初めて、健康の有難みを知ったわけです。ひどい花粉症になったのが37歳頃でした。その時に「えぇ、うしろ盾」の意味が腹に落ちました。

 以来、家族が健康であるということは、何より自分に幸せを与えてくれる身近な存在であり、その尊さを知らされ、家族への感謝が深まりました。

 健康は、失って、初めてその貴重さがわかります。溺れかけでもしない限り、人は空気の有難みがわからないように、病気になって初めて、健康であることの幸福に気づきます。

 あたり前であることに感謝しない自分。足ることを知らず暴走する欲望電車に乗っていた自分。思わず知らず反省の涙が頬を伝うのもその時です。家族の有難さ、肉親の絆の大切さを、思い知らされるのもその時です。

 病気も考えようによっては、健康になる入口だと思います。あなたの魂が、飛躍的に向上するチャンスでもあります。健康に感謝すれば、あなたの未来の幸福を約束してくれます。