三十年以上もお世話になっているS社長のお話です。

 建設業の仕事で、毎年2回程度、お伺いします。仕事の話が終わり世間話になると、健康診断のことを何度も話されるようになったのは、数年前からです。私より四歳年上で、その頃は七三歳だった思います。ご本人は血圧が少し高くて、かかりつけの病院に行かれ、精密検査を受けられた結果、やはり血圧が高く、血圧を下げる薬をその時から飲んでいるとの事。

 次に行くと、「健康診断をちゃんと受けとるか。定期的に病院で検査していないと俺みたいになるぞ。お前みたいに定期健診も受けないでいると、いつか病気なって倒れるぞ」。

 次の時も次の時も同じような内容のことを私に話されます。

 そのたびに私は、「自分の体のことは、自分が一番よく知っています。病院に行かなくても自分でわかります」。「お前みたいに、自分勝手に健康やと思っているやつに限って、ポックリといくんや」と、こんな会話が数年続きました。

 その翌年、S社長の奥様から連絡があり、主人は入院しました。肝臓に何かしこりが出来て、検査入院されたとの事。その後、検査入院が終わって自宅に戻られて静養されていました。しかし、体の調子がよくならず、再度の検査入院をされました。すると、肝臓ガンが発見されて本格的な入院となりました。ちょうど、コロナが始まった時期でしたので、お見舞いにも行けなくなり、一日も早く、元気になられて復帰されることを祈っていました。

 その後、奥様から聞いたことですが、抗ガン剤治療を始められて一時的に痛みも止まり、安心されていたのです。コロナのために、家族もあまり病院に行けず、二週間に一回程度になったそうです。ところが奥様が病院に行かれるたびに、S社長の体は痩せていくばかりでした。

 最後は何も食べることができない状態だったようです。そして、その年の九月に天国に旅立たれました。S社長とは、仕事以外のお付き合いもあり「我と俺の仲」でした。走馬灯のようにS社長の顔が浮かんできて、ご冥福をお祈りさせていただきました。

 これは私の勝手な憶測ですが、抗ガン剤治療でS社長の体を逆に悪くしまったのではないかと思われます。確かにガン細胞も消滅しますが、抗ガン剤治療は、健康な細胞までも傷つけられてしまい、体力も衰え、ガンに立ち向かう力が失われてしまうようです。

 安保徹先生の著書「人が病気になるたった2つの原因(講談社)」でも、全く同じようなことを指摘されていました。「現代医学のガン治療といえば、手術、抗ガン剤治療、放射線治療が三大治療法として知られていますが、どれも症状を一時的に抑え込むだけで、『ガンになる条件』を取り除くものではありません」。「抗ガン剤や放射線に関しては副作用の問題も考えなければならないでしょう」。

 人間の寿命と捉えれば、それまでのことです。しかし、「最近、欧米では分析やデータ至上主義の現代医学の反省から、一人ひとりに対して個別性を考えた医療に向かう流れが始まっています」と、安保徹先生の「病気にならない体をつくる免疫力(三笠書房)」に書かれていました。日本においても、一日も早く「一人ひとりに対して個別性を考えた医療」が主流になることを強く望みます。微力ながら「健康とミラクルパワー!」の記事も、そのために書いています。また薬ばかり出す医者が少数派になれば、医療費もかなり減るのではないでしょうか。