通常のサリーマンなどで、余剰資金があれば、一部は貯金すべきですが、一部は自己啓発のための、自分の将来の新たな能力をつけるための資金として、教育投資といったものに使ったり、本代に使ったりと、いろいろあると思います。たまには旅行などに使ってもよいかと思いますが、「自己啓発系の投資」にするのが効果的でしょう。
ただ、経営者になってお金を使う段になると、結局、「判断」になってきます。「投資判断」になってきますので、貯まったお金で人を雇うか、事務所を大きい所に移すか、あるいは、もう少し利回りのいい株を買ったり、証券を買ったり、何かに投資したりするなど、いろいろと使い途を考えられると思います。
ここで注意しておきたいことは、「あまりにも流行のピークに影響されやすい人は、若干危ない」ということです。経営者としては危ないと思います。
世間でみんなが噂をし始めたり、やり始めたりするようなときは、もう既にピークは過ぎていて、そこから入っていく大衆というのは、一般的にはたいてい損をすることになっています。そこまで話題になる前の段階でキャッチした場合は、ピークになるまでの間に儲けられることはよくありますが、既にピークになったものに投資するというには、たいていの場合、焦げ付くか、無駄になることが多いということです。
古い話で恐縮ですが、バブルの絶頂期は1985年から86年頃ですが、そのあとも、三年から四年ぐらいは続いていた頃です。もう、借金をしてでも物を買っておけば、値上がりしてくるという時代でした。得意先の数社は、不動産に手を出していました。大阪市内の土地なども、一週間程度で数百万も上がる時がありました。
十数社の社長から不動産購入の相談を受けましたが、私は、うまい話はいつまでも続くわけがなく、二番煎じ、三番煎じでは儲かるわけがなく反対意見を出して、絶対にやめるようにアドバイスをしました。
ちょうどその頃、台湾出身の邱永漢氏が、投資の本ばかり書いていました。「とにかく、借金をしてでもいいからマンションを買いなさい。一億円で買ったマンションは、翌年には二億円になる。だから、これで売り抜くのだ。そうしたら、二億円で売れる。その二億円で売れた金で、また買う。それが四億円になる。こういうかたちで、いくらでも大きくなるのだ」という感じで、いろいろと勧めていました。ですから、「飛びつかない人はバカだ」という感じでしょうか。「利率の低い銀行の定期預金でお金を置いている人は本当にバカであり、そのお金を不動産に投入するのが一番だ」というようなことを言っていました。
それと同じ頃か、その少しあとぐらいに、ハワイ出身の人が書いた、「金持ち父さん 貧乏父さん」という本なども流行りました。
この本には二人のお父さんが出てくるのですが、一人のお父さんは高卒でもなく、勉強はしていなかったが、投資したものが値上がりしたことで投資に成功し、それでたくさんお金を儲けて、ホテルも持ち、ハワイで大儲けをしました。そして、もう一人のお父さんは大学へ行って勉強し、教育者か何かになったものの、貧乏でピーピー言っているということでした。そういうことで、「実業で儲けたほうが大きい」というようなことを本で勧めていました。
また、著者はわざわざ来日してNHKなどにも出て、ニュースでインタビューを受けたりしていましたが、その数年後には逆転して、「金持ち父さんのほうが、倒産する」というような話になっていました。地道に教育者をしていたような父さんのほうが生き残ったということでしょうか。
得意先の二社も、ピーク時に多額の借金をされて不動産を購入されたのですが、バブルピークが終わり、購入した不動産も高値すぎて、売ることもできず、結果的にその会社は倒産しました。
このように、ピークになってくるとき、みんなの間でブームになった時は、やはり、怖い時期ですので、投資判断は慎重になさってください。