人生は順風のときだけではありません。「一生、順風が続く」ということはあり得ないと思って間違いありません。やはり、何年かおきの周期で、さまざまなことが起きます。良いこともあれな、悪いこともあります。
「最高のピークが来たかと思うと、そのあとで奈落の底に落ちる」というのは、よくあることです。「勝利したあとの大敗北が待っている」というのも、よくあることです。そうした上がり下がりの周期はあるものだと思ってください。
人生において、勝ちが続くときと負けが込むときとがあります。何をやってもうまくいかない時期はあるので、このときに、もがき苦しむのも問題です。
やはり、腰を据えて、時が来るのを待つことです。時を味方にしなければいけません。自分が勝てるときというのがあり、勝てるときに勝負をすると大勝しますが、負けるときに勝負をかけたら大敗します。
したがって、時を味方につけなければいけません。その意味で、「いまが勝負のときかどうか」ということを、よく見極める必要があります。自分にとって旗色が悪いときに、無理にがんばって玉砕してはいけません。そのときに、兵をたたんで退却し、次のときを待たなければいけません。
兵をたたんで退却するというのは、きわめて難しいことです。特に、若い人の場合は、「撃(う)ちてし止(や)まん」で、玉砕する方向にどんどん行ってしまうことがあります。負ければ負けるほど、がんばってしまうようなところがあります。
しかし、「時に利あらず」と思ったら、いったん兵をたたんで退却し、次の機会を待つことです。これは非常に老練な考え方ですが、人生全体で勝利するためには大事なことです。
現時点ではどうにもならないこと、あと何年かたたなければどうにもならないことはあるので、その時期には無理せずに力を養うことが大切です。「その時点で勝負をしなくてよいこともあるのだ」ということを知ってください。
時を味方につけることです。「時に利あらず」と思ったら、不動心でがんばることです。また、将来を期して力を蓄えることです。蓄積に入ることです。
時期が来ないものについては、勝負をかけても成功しないので、時期を待つことです。二年、三年と時期を待てるというだけでも大物の資格があります。たいていの場合は、あがいてしまうものです。
「この難局から抜け出るのは何年ぐらいかかるか。一年か、三年か、五年か」と、ある程度、目星を付けて、その期間を耐えなければいけません。
その耐えているあいだはどうすればよいかというと、日めくりを破りながら、一日一日を消し込んでいくことです。一年も二年も先のことはなかなか待てないので、毎日毎日を充実させて消し込んでいくことです。とにかく、きょう一日、自分としてできるだけのことをしていくことです。心を波立たせずに、やれるだけのことをやっていくことです。
そういうかたちで一日一日を充実させ、力を蓄えて、時が来るのを待つということが大事だと思います。