32歳で行政書士を開業し、41歳頃の話です。
当時、あるオーナーは、A建設会社、B貨物運送会社、C不動産会社を含めて7社の経営されていました。私はA建設会社のお仕事を頂戴していました。
普段は、あまりオーナーとお話する機会がなく、7社の総務や経理を担当されていましたオーナーのお姉さんを通じてのお付き合いでした。もちろん、オーナーとは数回程度の面識はありましたが、いつも挨拶をする程度で、どのようなオーナーなのか全く認識していませんでした。
ところがある日、オーナーから電話が入りました。ものすごい傲慢な言い方で、人を人とも思わないような話し方でした。その内容は、B貨物運送会社が経営危機に陥り、貨物運送の許可を、別会社を設立して、そちらに移してほしいという仕事でした。
詳しい内容は殆ど覚えていませんが、詐害行為や様々な法律に違反するようなやり方で、仕事を進めてくれと命令口調でした。私はあきれ果てて、詐害行為などの説明をしてから、「そのような仕事は受ける事ができません」と、毅然とした態度で断りました。
「分かった。ガシャン」で終わりでした。
仕事の内容もさることながら、あまりにも偉そうな口ぶりに、そのオーナーの人間性を疑いました。お姉さんとは、ほど遠い、お人柄でした。お姉さんは、上品でいつも優しく話される方でしたので、これが姉弟かと思われるほどでした。
それから1週間ぐらいしてから、全く知らない行政書士の先生から電話が入りました。
突然「なぜ、B貨物運送会社の仕事を断ったのか」と尋ねられました。そこで、私は詐害行為や様々な法律違反の話をしました。また、オーナーの傲慢な態度や命令口調にもあきれ果てて、「きっぱりと断りました」と答えました。
すると、その行政書士は「気に入った」と、おっしゃった。名前も聞いたことがない。顔も知らない同業者からの電話内容でした。
以来、その先生と、人間味のある交友関係を深めていく事になります。その先生の名前を仮にK先生とします。折に触れ、K先生とお会いさせていただき、私はK先生の事を非常に好きになりました。
人の出会いとは分かりませんが、このような形で、K先生に気に入ってもらったわけです。私もK先生のお人柄にひかれ、あれから35年の歳月が経ちますます。いつしか、我俺の仲になり、公私に関わらず、お付き合いをさせて頂いております。
K先生のすごいところは、すぐに相手の方の人間性を見抜かれる。そして、いつもその方に相応しいアドバイスをされます。そのアドバイスの仕方が、何とも言えない人間味あふれる機微に富んでいます。相手の方を喜ばす話術に長けています。
同業者の親友は数人いますが、K先生は別格です。K先生、ありがとうございます。