仕事の上で、重要感を持って人に認められて、引き上げられていく人。会社のなかで引き上げていける、あるいは取引先とかで認められて仕事が伸びていく人。あるいは売上が伸びていくような人というのは、基本的には、やはり「信用」がある人です。人間としての信用です。「その人をどこまで信じられるか、信用できるか」、この信用の範囲が、その人の成功の範囲を基本的に決めているようです。
だから、この信用のつくり方のところが極めて大事だと思います。
では、信用の基礎は何でしょうか。信用の基礎は、「誠実さ」です。誠実であることです。
これは道徳的に聞こえるかもしれませんが、やはり、世の中を生き渡っているうちに、みんな、いろんな癖がついてきたり、何かとごまかしたり、言い訳したり、他人のせいにしたり、いろいろな能力が身についてきて、「誠実であり続ける」ということは、とても難しいことです。何年か社会に出て生きていると、誠実であり続けることが難しくなります。
誠実さで思い出すのは、リンカーンです。リンカーンが弁護士になる前の話ですが、雑貨店などで働いていたそうです。働いていた当時、来たお客さんに、向こうが買った物のお釣りを返したのだが、あとで考えてみると返したお釣りが足りなかったことに気づいて、夜中に六マイル歩いて、小銭を返しに行ったということです。
六マイルは、十キロ程度あります。普通の歩き方で二時間三十分はかかります。けっこうな距離です。十キロ歩いて、夜、お金を返しに行くということは、なかなか、そう簡単にできることではありません。私も同じような経験をしましたが、私の場合は五百メートルでしたので、リンカーンは偉いと感じます。
雑貨店などに勤めていても、やはり、自分の計算が間違っていたことに対して「申し訳ない」と思って、六マイルも歩いて返しに行かれたわけです。「自分がミスを犯して、じっとしていられなかった」ということですね。
このように、誠実であるということが、未来を引き寄せるための大きな力になります。誠実であるから、信用がついてきます。
長い人生、生きているうちには、必ずしも守り切れないところはあります。どうしても約束が守れないことはあるのですが、そのなかで、「この人が守れなかったのだから、それは余程のことだろうな」「余程の事情があってのことだろうな」と相手が分かってくれる。そういう人格であることが大事だとも考えます。
誠実さを貫き通すには、昔から言われているように、「誰かが、どこかで見ています」。それは、神様かも知れません。ご先祖様かも知れません。太陽や天空が見ています。いつも、このように思っていると、誠実さの精度が増してきます。
優秀な得意先の社長さんらは、誠実な方が多く、大小に関わらず繁栄発展されています。やはり、会社経営の重要なポイントの一つだと痛感しています。