負けず嫌いの性格から出てくる2番目の悪徳は、「人の悪口を言う」ということです。かなり破壊的な力を持った悪口を堂々とのたまう人がいます。

 要するに、街で言ったら普通は「ケンカ沙汰」になるようなレベルの言葉でも、経営者という立場は強く、従業員より立場が上であるため、平気でズバーッと言うわけです。

 言われたほうは反論したくても、クビになるから言えません。「悔しい」という思いが内側に溜まっても、実際にその復讐はでき立場にあります。もし復讐がしたければ、会社を辞めて独立し、ライバルになって倒すぐらいしか方法がありません。立場が違いますから、いくら悪口を言われても反論のしようがないわけです。

 こういうことも知っておかなければなりません。

 社長族は自分の頭脳についてだいたい「うぬぼれ」があるので、人の悪いところや欠点を指摘するのが好きですし、実際にそういうものが見えます。「あなたのここが駄目だ」というところが見えるのです。

 それは、姿を変えた自慢話でもあるでしょう。また、もう一つには「相手にどれほど傷を与えているか」ということを感じないで言い切れる部分があるわけです。

 ただ、言われるほうも人間ですし、部下のなかに、社長以上の大きな器を持った人、徳を持った人が大勢いるはずもないので、それを社長自身が言われたら堪(こた)える以上に、部下は堪えるはずです。したがって、自分が同じことを言われたらどの程度堪えるかを考えてみて、「部下だったらそれ以上に堪えるはずだ」ということは知っておかなければいけません。

 彼らの仕事を正し、ときどきは厳しいことも言わなければなりませんが、「破壊性」を持った悪口は少し抑えて、言葉を整える必要があります。そして、その裏には「相手を生かしたい。伸ばしたい」という愛情があることを、やんわりと伝えてください。それが大事です。単なる「ストレス解消」用の悪口では駄目です。

 人格否定をしたりすると、普通は「パワー・ハラスメント」などと言われがちですが、その「パワハラ」ということも、会社を辞める覚悟でないと言えません。「うちの社長からパワハラを受けた。社長の地位を利用して、さんざん人格を攻撃した」と言い出したら、だいたい辞表を書くかどうか迷うぐらいの時期でしょう。

 そのように、立場が違うことをよく知っておいたほうがよいです。自分の賢さを見せるために、人の欠点を指摘したくなるものですが、この人格攻撃については、「一定の配慮」と「言葉をもう少し選ぶ余力」が必要です。

 この破壊的な悪口を控えるだけも、社長に対する従業員の捉え方が良い方向に変ってきます。会社の繁栄発展につながる一つの徳を積むことになります。