二宮金次郎と言えば、背中に薪(まき)を背負いながら読書している姿が有名ですが、私の通っていた小学校にも、二宮金次郎の銅像が立っていました。
二宮金次郎で思い出すのは、親戚のおばあちゃんの言葉です。おばあちゃんは、村中の人気もので、いつも私に二宮金次郎の話をしてくれました。
その一つに、「湯船のなかのお湯を自分のほうにかき寄せると、向こうのほうに逃げていくけれども、これを向こうのほうへ押すと、自分のほうに返ってくる」というお話をよくしてくれました。おばあちゃんは、このたとえ話をしながら「自分のことばかりではなく、人様のお役の立つことをしなさい」「お人が喜ぶことをしなさい」と、いつも教えてくれました。
この考え方は、個人にも組織にも通じる大事な考え方ですね。
「自分が得よう」と思って行動していると、人もお金も逃げていきます。そうではなく、自分のことを抑えて、他人様のことを考えてみるわけです。ほかの人のことを考えるようになると、逆に自分のほうへ戻ってくることがあるわけです。
お店であれ会社であれ、成功するための秘訣としては、人間に本来備わっている考え方、つまり、自分のほうに取り分を持ってきたいと思う、この自我の部分を抑えて、「ほかの人たちが得をする、利益を得られるには、どうしたらよいか」という考え方を大事にされることですね。言葉を変えて言えば、「与える愛」です。
人間はすぐに忘れる動物ですが、この話だけは、時々、思い出します。しかし、すぐに忘れます。また、思い出します。また、忘れます。この繰り返しでした。
このように、人間はすぐに忘れる動物です。三日前に読んだ本の内容を忘れています。忘れても良いです。もう一度、読み返せば良いのです。特に良書は、時々、読み返したほうが良いと思います。そうすると、少しずつ自分の中に定着してきます。
おばあちゃんのお話も同じです。二宮金次郎の例え話を思い出し、自己反省をして、自分自身の中に定着し実践していけば、やがて、自分のものになります。