幕末の頃に、中村正直氏という優秀な方がイギリスに留学し、彼の留学中に明治維新が起きました。彼は江戸幕府側によってイギリスに派遣されていたので、日本に戻らまければならなくなりました。その時にイギリスの友人から、一冊の本をプレゼントされます。

 それが、サミュエル・スマイルズという人が書いた「セルフ・ヘルプ=自助論」という本です。当時のイギリスでベストセラーになっていました。彼は船の中で、その本を何度も繰り返して読み、どのページに書かれていることも殆ど覚えてしまいました。

 彼が日本に戻ったときには、革命的な様相がかなり進行していたので、彼はこの「セルフ・ヘルプ」を猛スピードで日本語に翻訳しました。これが大きかったのです。彼はそのとき、「Self-Help」を「立志」と訳しました。「自助」ではなく「立志」です。本書の趣旨を「西国立志論」と訳したのです。

 当時の読書人口、本が読める人の数は、百万人ほどだったと推定されていますが、この「Self-Help」の翻訳本は百万部以上売れましたので、日本の知識人はほぼ全員、この本を学んだと言われています。これが明治時代の主たる言動力の一つとなり、日本はこの本によって大いなる発展を遂げたわけです。

 私も若い頃に、スマイルズの自助論を読み、勤勉の大切さ、時間の貴重さ、お金に対する考え方を学びました。その多くは覚えていますせんが、「天は自ら助くる者を助く」という言葉だけは、今も忘れることができません。「努力こそが成功への道」というような内容だったと記憶しています。エジソンも99%の努力と1%のひらめきを言っていますが、自助努力の大切さを教えてくれました。

「神は自らを救おうとする人を救う」という宗教の教えがあります。ご利益信仰ではなく、これは真実だと思います。これには、二種類の力の方向があると考えます。一つは天から来る力であり、神様の慈悲とも言えそうです。もう一つは、人間自身の「内側から来る力」です。この二つの力が合わさって一つの力となったとき、人生に奇跡が起きると思います。

 どのような奇跡か、人によって様々でしょうが、私も小さな奇跡は多く経験しています。残念ながら大きな奇跡は起きていませんから、まだまだ努力が足りないということでしょう。

 いずれにせよ、天から良き現象を来るのを、ただ待っているだけでは、ご利益信仰と同じです。自分自身の力で、やれるところまでやらなければ駄目です。自らの能力や努力によって人生の成功を目指そうとする姿勢は、神様もこれを祝福し、喜んでくださるはずです。

 自助努力される方に、「天は自ら助くる者を助く」という言葉が当てはまり、自助努力の大切さが良く理解できますね。まさに1%のひらめきです。