心のなかで貧しさをつかんでいると、絶対に豊かになれません。みなさんは嘘のように思うかもしれませんが、これは本当のことです。
これが本当であることを、もっと大きなスケールで述べてみます。
今から百数十年前、『資本論』で有名なカール・マルクスは、「共産党宣言」をしました。以後、その思想が世界に広がり、共産主義が地球の半分ぐらいに広がったように見えました。
しかし、近年、これがガタガタに崩れてきているのは、みなさんもご存じのとおりです。簡単に言えば、「貧乏を愛した人は貧乏になる」ということです。これだけの法則が百年以上かかって実証されたのです。
つまり、マルクス主義の根本にあるのは、貧しさを正当化する考え方です。「あなたや私を含めた人間が貧しいのは、私たちから搾取している人たちがいるからだ。奪っている人たちがいるから、貧しいのだ。貧しい人は、いつも正しくて、豊かな人は、悪いことをする。だから、暴力を使って革命を起こしてでも、この豊かな人たちを引きずり下ろさなければいけない。そして、貧しい人の共同体をつくり、平等に住まなければいけない」という思想です。
「この思想を信奉したら、どうなるか」というと、貧しさから脱却することは絶対にできません。なぜならば、自分が豊かになると、自らの正当性を失うからです。貧しいからこそ、「正しい」と主張できたのであって、豊かになると、今度は、自分が、ブルジョアジー(資本家階級)の仲間と見なされ、暴力によって倒される側になってしまうわけです。それゆえに、どうしても豊かになれません。そして、「貧しさ」というものを、ずっと正当化し続けるようになります。
その結果、どのような精神的な態度が出てくるのでしょうか。
まず、自分が成功しない理由を外部に求めるようになります。そこには、「政府が悪い」「大企業が悪い」「特定の個人が悪い」「環境が悪い」「時代が悪い」「景気が悪い」など、要するに、「自分以外の原因によって、自分は、こうなっているのだ」という被害妄想の哲学があるのです。
確かに、こうした態度が出るのは、人情として、もっともなことではありますが、このような考え方を信奉する人が増えてくると、世の中の積極性はゼロになっていきます。
そして、嫉妬心というものは正当化されていきます。他人に対する嫉妬心が合理化され、「成功している人は、悪いことをして成功しているのだから、みんなでやっつけようではないか」という考え方になってきます。
このような壮大な実験が、百年以上にわたって行われました。
いわば嫉妬を合理化する哲学を信奉し、それを基に国家をつくった結果、ソビエト連邦という国はガタガタになり、国民は、みな貧しくなったのです。要するに、「どういう心の態度を是とするか、よしとするか」ということによって、世界は変わってきます。
みなさんは、「これは、大きな文明実験の話だから、直接、自分自身には関係がない」と思うかもしれません。
しかし、みなさんの周りに、そういう傾向性を持った人が確実にいるはずです。親きょうだい、親戚、友人、あるいは、職場の人などを見回せば、誰かしら、自分がうまくいかない理由があると、必ず他の人のせいにし、逆に、誰かが出世すると、「それは、ご機嫌を上手にとったからだ」「彼は要領がいいからだ」などと言う人が必ずいます。
そういう人は、あまり出世したためしがありません。いつも、出世した人のようにならない理由、なりたくない理由を、いろいろと一生懸命に話し、それを潜在意識に刷り込んでいるからです。
成功したければ、こうした考え方を、「どうすれば成功できるか」という考え方に切り替えてなければいけません。そして、「よくなる」という方向を、明確に知った人、打ち出した人、信じた人は、実際によくなります。それだけのことです。
心の絵を良い方向に向けてください。そうすれば、潜在意識も良い方向に動き出します。潜在意識はゆるやかにしか動きませんが、毎日、心の絵を良い方向に向けてください。必ず良い人生が展開していきます。