松下幸之助氏の「素直な心になるために(PHP研究所)」からの引用です。
世の中が不況でお客さんが減ってしまった「うどん屋さん」のお話です。素直な心の効用の一つとして挙げられています。
うどん屋さんにとっては、商売上の危機です。しかし、うどん屋さんに素直な心が働いているならば、「この不況は自分の力を存分にふるうチャンスだ」「自分の本当の勉強ができるときだ」というように捉えるのではないかと書かれています。
自分の商売のやり方とか考え方を、第三者の立場に立って、考え直します。今までのやり方を徹底的に反省してみるわけです。つまり、不況という環境のせいにせず、素直な心があれば、自分自身の問題として捉えることができると力説されています。
例えば、「これまでの湯かげん、味かげんはどうだったか、お客さんに接する態度はどうだったか、といったことを素直に真剣に考え直してみることでしょう」
「場合によっては、お客さんに味かげんをたずねてみる。そして、一杯一杯のうどんを心をこめてつくり、新しい工夫も加えてお客さんにさし上げる。それで、従来よりも一段と味もよくなってくる。こういった姿になれば、お客さんも十分に満足されて、『同じ食べるなら、あの店へ行こうか』といったことにもなるのではないでしょうか。また、人から人への口伝えによって評判も高まり、自然にお客さんもふえてくることにもなるでしょう」
このように、うどん屋さんが素直な心で対処していくならば、不況になっても、困ることなく、かえってお客が増えて繁盛するということもありますと書かれています。
このようなことは、うどん屋さんに限らず、どのような商売、仕事にも、当てはまります。
「つまり、何事によらず、困難な直面して志を失わず、よりよき道を素直に私心なく考えつづけていくならば、そこによき知恵も集まってきて、いままで考えもつかなかった画期的なよき道がひらけてくるということも考えられることでしょう」
「人間の過去の歴史をふり返ってみても、戦争とか天災とか、そういう事あるごと、困難、混乱に出あうだびごとに、お互い人間の知恵、才覚が新たに生まれ、それによって人類の文化が一層すすんできた、という面もあるわけです」
「素直な心になれば、危機に直面してもこれをチャンスとして受けとめ、”禍を転じて福となす”こともできるようになる」ということですね。
危機の受けとめ方次第で、その後の展開も良い方向にもっていけますが、そこには、素直な心がなければ、なかなか知恵や新しい工夫も出てこないということです。素直な心は、人を大きく最長させてくれる魔法みたいな力を持っています。いかに、素直な心が大切かを教えてくださいました。