サミュエル・スマイルズ著「自助論(三笠書房)竹内均氏の訳」からのお話です。
自助論には、これでもかこれでもかと言うぐらい、勤勉の大切さ、時間の貴重さ、お金に対する考え方などが書かれています。「努力こそが成功への道」であると力説されています。特に第1章「成長への意欲と自助の精神」の冒頭に述べられている一節は、自助論の要だと思います。長くなりますが引用させていただきます。
「天は自ら助くる者を助く」
「この格言は、幾多の試練を経て現代にまで語り継がれてきた。その短い章句には、人間の数限りない経験から導き出された一つの真理がはっきりと示されている。自助の精神は、人間が真の成功を遂げるための礎である。自助の精神が多くの人々の生活に根づくなら、それは活力にあふれた強い国家を築く原動力ともなるだろう」
「外部からの援助は人間を弱くする。自分で自分を助けようとする精神こそ、その人間をいつまでも励まし元気づける。人のために良かれと思って援助の手を差し伸べても、相手はかえって自立の気持ちを失い、その必要性も忘れるだろう。保護や抑制も度が過ぎると、役に立たない無力な人間を生み出すのがオチである」
「いかにすぐれた制度をこしらえても、それで人間を救えるわけではない。いちばんよいのは何もしないで放っておくことかもしれない。そうすれば、人は自らの力で自己を発展させ、自分の置かれた状況を改善していくだろう」
「だが、いつの時代にも人は、幸福や繁栄が自分の行動によって得られるものとは考えず、制度の力によるものだと信じたがる。だから、『法律をつくれば人間は進歩していく』などという過大評価が当たり前のようにまかり通ってきた」
「確かに、法律がうまく施行されれば、人は個人的な犠牲をさほど払わずにそれぞれの労働(精神労働や肉体労働)の果実を楽しむことができる」
「だが、どんなに厳格な法律を定めたところで、怠け者が働き者に変わったり、浪費家が倹約に励みはじめたり、酔っぱらいが酒を断ったりするはずがない。自らの怠惰を反省し、節約の意味を知り、酒におぼれた生活を否定して初めて人間は変わっていく」
「われわれ一人一人がよりすぐれた生活態度を身につけない限り、どんな正しい法律を制定したところで人間の変革などできはしないだろう」と結んでいます。
スマイルズの自助論は、160年以上も読まれている名著です。日本では、明治4年に『西国立志論』として中村正直氏により翻訳刊行されました。
この「自助論」の翻訳本は、当時、百万部以上売れましたので、日本の知識人はほぼ全員、この本を学んだと言われています。これが明治時代の主たる言動力の一つとなり、日本はこの本によって大いなる発展を遂げたわけです。
昨今のバラマキ政治を正す意味でも、よい書籍だと思います。今こそ、自助の精神を拡大し、明治時代の心意気を復活させたいものです。