松下幸之助さんの言葉に、「逆境もよし、順境もよし、要はその与えられた境遇を素直に生き抜くことである」とあります。

 まさに名言だと思います。

 人生の途上で、いろいろな事があると思います。順境の時もあれば、逆境の時もあります。よく、人を見る時には、その人の順境の時と、逆境の時を見れば、その人物の器が測れるといいます。

 その人が順境で全盛期の時に、有頂天になり自慢気に話す方はそれまでですが、順境の時に、「これは自分の力ではない。皆さまのお陰でなれました」と、感謝と謙虚さを持って、語れる方は、人徳のある方だと思います。

 反対に逆境の時に、環境のせいや人の責任する方がいますが、気持ちは分かりますが、人徳のない方だと感じます。逆境の時にこそ、「自分の努力が足りない」「これをバネにして、さらなる精進をしよう」と捉える方は、素晴らしいと思います。

 幸之助さんの言葉は、逆境の時も順境の時も、その与えられた境遇を素直に受け入れて、生き抜くことを教えてくださいます。素直に受け入れるところが大事ですね。

 得てして、凡人である私はこのようには考えにくいものですが、大切にしなければならない考え方であり、行動に移し実践するところに意義があると考えています。

「心配事の9割は起こらない(三笠書房)」を書かれた枡野俊明さんの言によれば、「素直に生きていたら、よい境遇も悪い境遇もないのです。そこにはただ、一生懸命に生きる『場所』があるだけです」と書かれています。

 さすが禅宗のお坊さんの言われることは、心に染みわたります。

 また、「日日是好日(にちにちこれこうにち)」という禅語の話もされています。

「これは毎日がよい日ばかりという言葉ではありません。人生には晴れの日もあれば、雨の日もある。穏やかな陽射しに包まれることもあれば、吹きつける寒風に身をすくめることもあります。しかし、いずれの日にも、あなたはその日でなければできない実体験をする。かけがえのない経験を積む。ですから、すべてが有意な『好日』なのだ—-というのがこの禅語の意味するところです」

「境遇があなたの生き方を左右さるのではありません。あなたの生き方によって境遇はどんなものにでもなるのです」と結ばれています。

 実にいい教えだと思います。この言葉を聞いて、私の尊敬する道元禅師のことを思い出しました。若い頃に道元さん関係の書物を読んでいましたので、ひょっとしたら、枡野俊明さんは、道元禅師の生まれ変わりかもしれません。と感じました。