信託口口座の開設は、銀行によって多少異なるでしょうが、基本的な方法は同じだと思います。簡単に言えば普通預金の通帳を作る事ですが、信託専用の普通預金の通帳を作ることをいい、通常のプライベートの通帳とは異なります。

実際に依頼を受けた事例に基いて、説明いたします。

 

1.信託契約書(案)の作成

こここは行政書士の最大の仕事になり、依頼者の意向を尊重されることが一番です。その意向を受けて、依頼者に最もふさわしい信託契約書(案)を作成します。

 

2.信託契約書(案)のチェックを銀行に依頼

信託口口座を開設してくれる銀行の担当者と事前に連絡を取ります。

具体的には、その担当者にFAX等で「信託契約書(案)」を送ります。通常は、信託契約書(案)のチェックは、その銀行の本店でチェックされますので、約10日前後の時間を要します。その後、銀行の担当者から連絡があり、多少の補正や追加事項等のアドバイスを頂戴しますが、専門家が作成した信託契約書(案)なら、たいていの場合、OKの返事をいただけるはずです。

銀行からOKの返事を頂いたなら、次は、その信託契約書(案)を公正証書にします。この場合に気をつける事は、先に公正証書を作成しない事です。銀行のチェックが優先しないと、信託口口座を開設してくれません。

 

3.公正証書の作成

銀行のチェックが完了後、事前に公証人に、信託契約書(案)、委託者の印鑑証明書、受託者の印鑑証明書、信託不動産があるなら土地建物の謄本、固定資産評価証明等を送り、公正証書(案)を作成してもらいます。

私と取引のある公証人の先生も、銀行でのチェック済みの信託契約書(案)を基本に公正証書を作成されました。もっとも、公証人の先生でも民事信託について著名な先生もいらっしゃいますので、その先生の著書を参考にされると良いと思います。

後日、委託者、受託者、私の3名が公証役場に出向き、公正証書作成の手続に入ります。

その際に必要な書類は、委託者及び受託者の印鑑証明書と実印です。

公証人が、公正証書(信託契約書)を委託者と受託者の面前で、読み上げて説明してくれます。その後、その公正証書の原本に委託者と受託者が署名押印して完了です。

公正証書の正本と必要部数の謄本発行してくれます。

 

4.具体的な信託口口座の開設

信託口口座を開設するには、基本的には信託の受託者だけが銀行に出向くだけで完了します。信託口口座を開設する場合の必要書類は、公正証書の正本(コピー後返却)、受託者の印鑑(認印も可)、受託者の運転免許証、マイナンバーカードなどの写真付きの身分を証明するものが必要です。数点の書類に必要事項を書いて完了です。

信託財産の内、金銭を信託するのですが、その日の内に普通預金の通帳を発行してくれる銀行もあれば、銀行の都合で、翌日以降になり、後日、受託者の自宅に郵送される場合もあります。後日に通帳ができる場合は、後日、委託者が信託財産に記載された金額を受託者の口座に振込みます。もちろん、キャシュカードも発行してくれますが、これは後日、受託者の自宅に郵送されます。

 

5.普通預金通帳の名称

通常の普通預金通帳は、預金する方の氏名だけですが、信託口口座の通帳は、次のような名称になります。

 

 〇〇〇〇(ここは委託者の氏名)

信託受託者 〇〇〇〇

 

つまり、先に信託の委託者である方の氏名がきて、次に、信託受託者と明記され、受託者の氏名が明記されます。これが、信託口口座の通帳名義になります。後日、委託者がこの通帳に振込む場合は、上記のとおりの振込先口座になります。

信託契約書に「追加信託」の事を通常入れていますので、その後、委託者から受託者の口座に追加的に金銭を振り込む事もできます。