会社法が施行されたのは、2006年(平成18年)5月1日でした。2025年(令和7年)9月現在で20年近くになりました。

 会社法施行以前は、株式会社においては、取締役3名以上、監査役1名以上の選任が必須であり、取締役会も必ず設置しなければいけませんでした。少なくとも4名の役員が必要だったわけです。ところが、会社法施行以降に設立する株式会社は、取締役の人数は1名以上、取締役会の設置・監査役の設置は任意となりました。会社の実情に応じて役員の構成を決めることが出来るようになり、取締役1名でも株式会社を設立できます。

 しかし現実的には、会社法施行以前に設立された株式会社で、取締役会を置いたまま、監査役を置いたままの会社は、まだまだ多くあるようです。そのような会社が、取締役会を廃止し、監査役も置かない会社にしようとする時に注意することがあります。

 つまり、会社法第327条には、取締役会を設置している会社は、監査役を必ず置かなければなりません。取締役会だけを残し、監査役のみを廃止することは出来ません。この点は気をつけてください。

 ゆえに、監査役設置会社を廃止する時は、必ず取締役会設置会社の廃止も同時にしないといけません。会社法第327条に違反するからです。

 反対に、監査役設置だけを残し、取締役会を置かないことは可能です。このパターンなら会社法第327条に違反しないからです。

 また、株式の譲渡制限の規定も変更しなければなりません。取締役会設置会社の場合は、「当会社の株式を譲渡するには取締役会の承認を受けなければならない」と規定されている事が多いので、この変更も同時に進めなければなりません。例えば、「当会社の株式を譲渡するには、株主総会の承認を要する」とか「当会社の株式を譲渡により取得するには、代表取締役の承認を受けなければならない」とかに変更します。

 さらには、「監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定め」も、同時に廃止しなければなりません。

 以上、取締役会設置の株式会社が、監査役を廃止するためには、取締役会も同時に廃止しなければなりませんので、ご注意ください。