例えば、60歳、70歳を超えると愚痴が多くなります。そして、心配症になります。取り越し苦労症になったり、持ち越し苦労症になったりします。それは、心の問題だと思うかもしれません。もちろん心の問題もありますが、歳をとっていくとそうなるのは、なぜでしょうか。それは、肉体が弱るということが大きな原因でしょう。

 歳をとると、まず足が弱ってきます。足が弱ってくると動けなくなり、不自由になってきます。そうすると、周りに対する不平不満がたまってきて、愚痴が出ます。愚痴が出ると、言われた相手は非常に気分が悪くなります。そして、家庭内の不和が起きてきます。

 根本は簡単なことです。定年退職してから体を動かさなかったということが原因です。それが心の問題に発展していき、しかも一人だけの問題ではなく、複数の人を巻き込むような家庭問題になっていきます。単純なことです。今まで通勤していた会社を辞めたために、その部分だけ運動量が減ったのに、それをカバーしようとしなかったという、それだけの理由で、運動不足になり愚痴が出ます。

 同じようなことは、女性にもあるでしょう。食べ物に関しては、食べ過ぎる人もいれば、拒食症のようになってガリガリにやせていく人もしますが、いずれも極端な生き方であると思います。

 例えば、「ケーキ、ケーキ」と、一日に二個ケーキを食べるのが幸福であると考え、ケーキを食べたいがために、ごはんを食べないで必死にダイエットして、だんだん体の調子が悪くなってきているのに、それでも、「死んでもいいからケーキは食べたい」という人も、女性のなかにはいます。

 その気持ちは分からないではありませんが、はやり、「いいかげんにしてほしい」という気持ちになります。それで体が悪くなってもやむえないのです。それは自業自得というものです。人間はケーキだけで生きていけません。人間には必要な栄養分というものがあります。

 チョコレートの食べ過ぎで虫歯になったところで、誰も責任はとれません。それは誰の責任でもありません。チョコレートを食べ過ぎて虫歯になるのは、当人の責任なのです。

 したがって、自分の責任において肉体の管理をすることが必要です。特に運動については、言ってくれる人はいないと思います。各人の環境に合わせた運動の仕方というのは、誰も言ってくれないので、「体も財産のうちだ」と思って手入れすることです。各人の可能な範囲において、必ずやっておくことです。体が強くなった分だけ、心のほうも強くなります。元気であると強気なことを言い、体が弱ってくると弱気なことを言うものです。

 老後の健康管理、特に適度な運動は、体だけでなく心も整えてくれますので、努めて実行なさってください。それには、歩くことが最も良いとされていますが、最初から一万歩も歩く必要はありませんが、二千歩でも三千歩でも、歩く習慣をつけてください。毎朝、歯を磨くように習慣づけることがポイントだと思います。