1.火災保険金請求権は、相続財産に該当しない

 相続開始後の建物の火災に伴う火災保険金請求権は、相続財産ではありません。

 少し難しい話になりますが、相続財産である不動産が消滅等する代わりに得た財産的利益を代償財産といいます。代償財産は相続開始後に生じた財産的利益ですので、相続財産ではありません。

 建物の火災に伴う保険金請求権は、こちらの代償財産に該当しますので、相続財産ではないという結論になります。

 

2.火災保険金請求権が遺産分割の対象になるかどうか

 もう1点、火災保険金請求権が、遺産分割の対象になるかどうかですが、こちらは判例に基づいて考えていく必要があります。

 保険金に関する判例ではありませんが、下記のとおり不動産を売却した際の判例があります。

「共同相続人が全員の合意によって遺産分割前に遺産を構成する特定不動産を第三者に売却したときは、その不動産は遺産分割の対象から逸出し、各相続人は、第三者に対し各持分に応じた代金債権を取得し、これを個々に請求することができるものと解すべき」という解釈です。

 こちらと同じように考えると、火災保険金請求権も遺産分割協議の対象ではなく、各相続人が相続分に応じた保険金請求権を取得すると考えることになります。

 しかし、共同相続人全員により遺産分割の対象とする合意があるなどの特別の事情がある場合には、遺産分割の対象とすることができるという考え方が通説とされています。

 したがって、火災保険金請求権は、相続財産ではなく、原則として遺産分割の対象にならず、各相続人が持分に応じて保険金請求権を取得します。しかし、相続人全員の合意により、遺産分割の対象とすることができるという結論になります。

 

3.実際の保険金請求の際は

 実際の保険金請求の際は、契約者の名義変更手続も必要になりますので、保険会社に事情を説明して提出する書類を確認し、名義変更、請求手続きを進めることになります。