ある外国人の妻は、夫より先に日本国籍を取得している。夫は外国籍のままである。

今般、夫も帰化を希望されているが、帰化後の氏名は日本性ではなく、長年名乗ってきた本国の氏名のまま帰化したいと、相談があった。

帰化申請の場合、帰化後の氏名は自由に決めることはできるが、戸籍謄本をつくる時に、夫婦別姓は現在のところ認められていない。帰化すれば、日本国籍を取得するので、民法750条と戸籍法の届出制度で、夫または妻の氏を称することになる。

現在、別姓を実践する夫婦は(1)結婚して戸籍上は同姓としたうえで結婚前の姓を「通称」として使用する(2)籍を入れずに「事実婚」とする——などの方法をとっている。1996年には、法相の諮問機関「法制審議会」が、希望する夫婦はそれぞれの姓を変えずに結婚できる「選択的夫婦別姓」を盛り込んだ民法改正案を答申したが、実現していない。また近年、夫婦別姓の問題が多く話題にあがっているが、現法上は、夫婦別姓は認められていない(国際結婚は除く)。しかし近い将来、日本も、夫婦別姓が認められる時代がくる可能性が高いかもしれない。

現在のところ、くだんの相談者は帰化許可後に、ご自身の氏か妻の氏かを選択して、戸籍謄本を編成することになるが、ご本人は、夫婦別姓を切望されている。ここにも(帰化申請の場合)、日本における夫婦別姓の問題点が浮かび上がる。