特定建設業の要件は、財産要件のクリアと1級資格者が必要になります。
順を追って説明していきます。
1.特定建設業の財産的要件
特定建設業の財産的要件は3つ、すべてに該当することが必要です。
⑴ 流動比率が75%以上あること
⑵ 資本金の額が2,000万円以上であり、かつ、自己資本の額が4,000万円以上であること。
⑶ 欠損の額が資本金の額の20%を超えていないこと。
上記の3項目は、直前決算書の貸借対照表で判断します。
3項目について、説明していきます。
⑴ 流動比率が75%以上あること
流動比率とは、短期的な支払能力を分析する際に用いる指標です。貸借対照表の流動負債に対する流動資産の割合を示しています。流動資産を流動負債で割り、100を掛けたパセントが流動比率です。計算式は次のとおりです。
流動資産 ÷ 流動負債 × 100=流動比率(%)
流動資産とは、1年以内に現金化が見込まれる資産で、例えば、現金、売掛金、受取手形、有価証券、未収金、商品、製品、原材料等です。
流動負債とは、1年以内に支払期限が到来する負債で、例えば、買掛金、支払手形、未払金、預り金、前受金等です。
例えば、現金預金や未収金(流動資産)が5,000万円あり、未払金や短期借入金(流動負債)が4,000万円あったとします。
この時の流動比率は、5,000万円÷4,000万円×100=125%になります。
流動比率が125%あるということは、流動資産が流動負債を超えていますから、比較的良い状態といえます。流動比率が200%、300%は、流動負債の2倍、3倍の流動資産があり、かなり良い状態であり、資金繰が楽な会社といえます。
流動比率が100%なら、流動資産と流動負債が同じ金額で、何も資産がない状態と同じことを示しています。つまり、流動比率の%が大きい会社ほど、資金繰が安定した良い会社と言えます。
特定建設業では、この流動比率が75%以上ですから、けっしてハードルが高い%ではありません。むしろ、良い%ではありません。
流動比率は、会社の短期的な支払能力(短期安全性)が分かります。会社の規模や業種によって異なりますが、流動比率が120%以上であれば、一般的には短期的な資金繰りには困らないとされ、100%を下回っていると支払能力に不安があるとされます。与信調査・与信管理をした取引先企業の流動比率が100%未満の場合は要注意です。
⑵ 資本金の額が2,000万円以上であり、かつ、自己資本の額が4,000万円以上
この数値は、貸借対照表の「純資産の部」で判断します。特定の許可申請をする際は、直前決算の貸借対照表で判断します。
例えば、下の純資産の部を見てください。
(純資産の部)
1.資本金 2,000万円
2.利益剰余金 100万円
3.別途積立金 1,500万円
4.繰越利益金 700万円
合計 4,300万円(自己資本)
資本金が2,000万円以上あり、自己資本が4,000万円以上あります。
これで2番目の要件はクリアしています。
(純資産の部)
1.資本金 4,000万円
2.繰越利益金 100万円
合計 4,100万円(自己資本)
この場合も、資本金が2,000万円以上あり、自己資本が4,000万円以上あります。
払込み資本金を4,000万円以上にし、繰越利益金がプラスなら要件はクリアします。
次の純資産の部は、どうでしょう。
(純資産の部)
1.資本金 4,000万円
2.繰越欠損金 -200万円
合計 3,800万円(自己資本)
資本金が2,000万円以上ありますが、自己資本が4,000万円以上ありません。
これでは、特定の要件をクリアしません。
⑶ 欠損の額が資本金の額の20%を超えていないこと
3つ目の要件をみましょう。
(純資産の部)
1.資本金 7,000万円
2.繰越欠損金 -2,000万円
合計 5,000万円(自己資本)
資本金が2,000万円以上あり、自己資本も4,000万円以上あります。
しかし、欠損の額が資本金7,000万円の20%で1,400万円となり、繰越欠損金が2,000万円ありますから、これでは要件がクリアしません。
次の例では、どうでしょうか。要件がクリアしますか。しませんか。
(純資産の部)
1.資本金 7,000万円
2.利益剰余金 100万円
3.別途積立金 1,000万円
4.繰越欠損金 -2,000万円
合計 6,100万円(自己資本)
繰越欠損金が2,000万円ですが、この場合には、利益剰余金100万円+別途積立金1.000万円=1,100万円あり、実質的な欠損金は、2,000万円-1,100万円=900万円です。資本金7,000万円の20%の1,400万円を超えていませんから、特定の要件をクリアします。
以上、上記3つの項目が特定の財産的要件です。
次に、特定建設業の場合には、財産的要件以外に1級の資格者が必要になります。
2.1級の資格者がいること(専任技術者)
土木工事業なら1級施工管理技士、建築工事なら1級建築施工管理技士、塗装工事なら1級施工管理技士又は1級建築施工管理技士が必要になります。
これは特定許可を得るために、最低1人の1級資格者が必要になります。もちろん、この1級資格者は、社会保険や雇用保険に加入にしなければならない。
3.監理技術者の1級資格者が別途必要になる
特定建設業の許可を得るということは、役所の仕事を積極的にこなしていくということが前提です。ゆえに、特定許可を得るための専任技術者である1級資格者以外に、建設現場で働く監理技術者(1級)が最低でも、もう一人いないことには、特定許可を取得する意味がありません。1級資格者は、二人より三人、五人と多いほど良いです。最低二人という意味です。末尾の「1級の資格を取らないものはリストラ!」を参考に。
以上が、特定建設業の許可を得るための要件です。
財産的要件の3項目と、1級資格者が最低二人必要だというこです。