結論から述べます。機械的な機能を有する弁(メカニック的な弁)の取付工事は、機械器具設置工事に該当します。メカニック的な弁とは、空気圧シリンダ操作弁(ピストン弁)、電動弁、特殊弁、弁自動化の改造工事などをあげることができます。これらのメカニックな弁は、クリーンセンター、石油精製所、化学・工業プラント、水力発電所、ボイラー設備、タービン設備などで利用されています。これらのメカニックな弁の取替えや整備工事は、機械器具設置工事に該当します。つまり、メカニックな弁は機械的な機能を備えていて、その弁自体を機械器具として取り扱うからです。ここがポイントになります。但し、電気工事、消防設備工事、管工事に該当しない機械器具の取付工事が対象です。

 

1.機械器具設置工事の概念

平成26年12月25日国土交通省告示第1193号に、機械器具設置工事は「機械器具の組立て等により工作物を建設し、又は工作物に機械器具を取付ける工事」と規定しています。

前半部分は「機械器具の組立て等により工作物を建設し」とあり、例えば、プラント設備工事、運搬機器設置工事、内燃力発電設備工事、給排水機器設置工事、集塵機設置工事、サイロ設置工事などが該当します。つまり、それ自体が機械器具の組立により出来上がった工作物です。これらが典型的な機械器具設置工事だと理解できます。

ただ、機械器具といっても様々な物があり、そのすべてが機械器具設置工事に該当するとは限りません。平成13年4月3日国総建第97号(建設業許可事務ガイドライン)には「建設工事の区分の考え方」を、次のように規定しています。

「機械器具設置工事には広くすべての機械器具類の設置に関する工事が含まれるため、機械器具の種類によっては電気工事、管工事、消防施設工事等と重複するものもあるが、これらについては原則として、電気工事等のそれぞれの専門の工事の方に区分するものとし、これらいずれにも該当しない機械器具あるいは複合的な機械器具の設置が機械器具設置工事に該当する」と規定されています。また、「建築物の中に設置される通常の空調機器の設置工事は管工事に該当し、トンネル、地下道等の給排気用に設置される機械器具に関する工事は機械器具設置工事に該当する」とも規定されています。

例えば、通常の空調機器の設置工事は管工事に該当し、火災報知設備は消防施設工事に該当し、照明設備工事は電気工事に該当し、これらは機械器具設置工事に該当しません。

また、「複合的な機械器具の設置」も機械器具設置工事に該当すると規定されています。これは、機械器具の据付に複数の専門工事がかかわる場合を指しています。つまり、機械器具工事の考え方は、各専門工事に区分されるものはその専門工事で区分し、いずれにも該当しない機械器具設置や、複合的な機械器具の場合は、機械器具設置工事になると理解できます。

次に後半部分は「工作物に機械器具を取付ける工事」とあり、工作物が先にあり、後から機械器具を取付けるイメージです。ゆえに、既存工作物に新たに機械器具を取付ける工事も機械器具設置工事に含まれます。機械器具の種類や設置の考え方は上記と同様です。

また、既設のプラント設備に一部の機械器具を取付ける工事も含まれると考えます。その場合に気をつける事は、そのプラント設備と一体となって機能する機械器具の取付工事が機械器具設備工事に該当するという事です。ここが機械器具設置工事のポイントです。具体的には、発電所内の「復水器」は、発電用タービンと一体化することで蒸気を水に戻す本来の性能を発揮できますので、「復水器」を分解し現場で組み立てる工事は、機械器具設置工事に該当します。

また、ボイラー設備やタービン設備のメカニックなバルブ(弁)の取付工事も、機械器具設置工事に該当します。なぜなら、単純な消耗品の交換ではなく、現場での分解工事等が伴い、4、5名程度の技術者が1、2週間かけてする工事で、ボイラー設備やタービン設備と一体化することで機能する機械器具の取付工事だからです。つまり、メカニック弁は機械的な機能を備えていて、その弁自体を機械器具として取り扱うからです。ここがポイントになります。

ゆえに、機械器具設置工事は、印刷機械や食品製造機械等の生産設備を工場内に据え付ける工事を対象にしたものではありません。あくまでも、工作物と一体化された機械器具で、管工事、電気工事、消防設備工事に該当しない機械器具が該当します。したがって、工作物と一体化することなく性能を発揮する機械器具を納品し、アンカーで固定するような作業は、機械器具設置工事には該当しません。一般的に「とび・土工・コンクリート工事」に該当します。

さらに、既設のプラント設備に伴う機械器具の修繕工事や整備工事も機械器具設置工事に該当すると考えます。なぜなら、機械器具の性能を回復させる工事や性能を向上させる工事も建設工事に該当するからです。

但し、機械器具の保守点検作業や、消耗品の交換、運搬作業、調査といった業務は建設工事に該当しません。いわゆる、機械器具のメンテがこれに該当します。

 

2.メカニックな弁の取付工事

バルブ(弁)の取付工事は、機械器具設置工事に該当するのか、管工事に該当にするのか、非常に悩むところです。バルブの取付工事は、単純に機械器具設置工事、あるいは管工事と決めることは難しいです。

バルブの取付工事といっても様々で、空気圧シリンダ操作弁(ピストン弁)、電動弁、特殊弁、弁自動化の改造工事などがあります。これらはメカニックな弁で、クリーンセンター、石油精製所、化学・工業プラント、水力発電所、ボイラー設備、タービン設備などで利用されています。これらのメカニックな弁の取替えや整備工事は、機械器具設置工事に該当します。あくまでも、これらのプラント設備と一体となって機能するメカニックな弁の取付工事です。

ただし、空調機器、消火設備、発電設備にもメカニックな弁は利用されていますが、これらは、それぞれ、管工事、消防施設工事、電気工事に該当し、これら以外の機械器具が機械器具設置工事の対象になります。

要するに、既存のプラント設備にメカニックな弁の取替や整備工事は、間違いなく機械器具設置工事に該当します。例えば「〇〇クリーンセンター 1号ユニット、機械名称 自動弁の取付工事」と記載されているなら機械器具設置工事です。これらのメカニックな弁の取付工事は、機械器具設置工事に該当し、行政庁でも疑義は出ません。大阪府で確認済です。

バルブ(弁)の取付工事は、弁の分解・整備から弁部品の補修及び制作取付、弁自動化改造工事まで、幅広くあります。単純な点検や調査は建設工事に該当しないと考えますが、メカニックな弁の整備や補修は機械器具設置工事に該当しますが、機械器具の種類によっては、管工事、消防施設工事、電気工事の区分を明確することが、非常に重要になります。

 

3.電気工事及び消防施設工事と機械器具設置工事の違い

電気工事は、第1種電気工事士等の免許がなくては、発電設備、変電設備等の機械器具の取付工事はできません。建設業法では、電気工事に係る技術者資格に「実務経験10年、5年、3年」は認めていませんので、自ずから、電気工事に関係する機械器具を取付ける場合は電気工事に該当し、機械器具であっても機械器具設置工事には該当しません。

例えば、メカニック的な弁を発電設備に取り付けた場合は、明らかに電気工事士の免許が必要であり、電気工事業に該当します。したがって、電気工事と機械器具設置工事の違いは簡単に区別できます。

同様に、消防施設工事も甲種乙種の消防設備士の資格がなくては、屋内消火栓設置工事、火災警報設備、消火設備等の機械器具の取付工事ができませんので、消防施設工事と機械器具設置工事の違いは簡単に区別できます。

 

4.管工事と機械器具設置工事の違い

ガイドラインには、管工事とは「冷暖房、冷凍冷蔵、空気調和、給排水、衛生等のための設備を設置し、又は金属製等の管を使用して水、油、ガス、水蒸気等を送配するための設備を設置する工事」と規定しています。具体的には、冷暖房設備工事、冷凍冷蔵設備工事、空気調和設備、給排水・給湯設備工事、厨房設備工事、衛生設備工事、浄化槽工事、水洗便所設備工事、ガス配管工事、ダクト工事等が典型的な工事と理解できます。

後段の部分は「金属製等の管を使用して水、油、ガス、水蒸気等を送配するための設備を設置する工事」と規定されていますので、あくまで、上記の冷暖房設備工事等に伴う整備工事や修繕工事が管工事に該当しますので、機械器具工事との区別は容易に判断がつくと考えます。

また、管工事は、管工事施工管理技士等の資格がなくても、実務経験だけでも技術者の要件を認めています。同様に、機械器具設置工事も技術士(機械等)の資格がなくても、実務経験だけでも技術者の要件を認めています。したがって、プラント設備に機械器具を取付ける場合、管工事か機械器具設置工事かの判断が難しくなりますが、明らかに、冷暖房、冷凍冷蔵、空気調和、給排水、衛生等のための工事に関係する機械器具の取付工事は管工事に該当しますので、機械器具設置工事との区別がつきます。これらの管工事に取り付けるバルブ(弁)は、管工事に該当します。

上述したガイドラインにも「建築物の中に設置される通常の空調機器の設置工事は管工事に該当し、トンネル、地下道等の給排気用に設置される機械器具に関する工事は機械器具設置工事に該当する」と規定されていますので、明確に理解できます。

上記の管工事に該当しない、また、電気工事、消防設備工事に該当しない機械器具が対象になり、工作物と一体をなす機械器具の取付工事が機械器具設置工事に該当します。

結論的には、メカニックな弁は、電気工事、消防施設工事、管工事に該当する機械器具にも利用されていますので、前提となる工事が重要であり、電気工事、消防施設工事及び管工事に該当しない機械器具が対象であり、また、工作物と一体をなす機械器具が対象になりますので、注意が必要です。