高野澄氏が編訳された「江戸の笑い話(人文書院)」という書籍があります。笑い話の紹介です。タイトルは、「代役」「雪のような」「うぐいす」の三つです。

 

◎ 代役

 男が女に、ぞっこん惚れた。

 「百夜つづけて通ってくるだけの熱意があれば・・・」

 「たったの百夜、通いつづけてみせる!」

 毎晩々々やってきて、女の家のそばの木に印をつけ、九十夜がすぎた。

 つぎの夜ははげしい雨と風、それでも男は蓑笠(みのかさ)に身をかためてやってきた。

 男の熱意にうたれた女は、

 「今夜はここへお泊りになって・・・」

 男は女の手をふりはらう。

 「あなたの熱意はわかりました。百夜とはいいませぬ、これで充分ですから、どうか今夜

 はお泊りに・・・」

 「おれは雇われただけだ。こんな雨風の夜、はやく家にかえりたい。泊まるなど、イヤな

 こった!」

 

◎ 雪のような

 客が女郎の肌を見て、

 「雪のようだな」

 「アラー。こんな黒いのにィ・・・」

 「じつに冷たい」

 

◎ うぐいす

 長崎から、二羽のオランダのうぐいすを買った。

 一羽が、「スッペラボウ」と鳴いた。

 「なるほど、オランダのうぐいすだけあって、鳴き声も変わっていますな」

 もう一羽が、「ホウホケキョウ」と鳴いた。

 「おや、これは日本のうぐいす、かな?」

 「これは通訳です」