負けず嫌いの性格から出てくる4番目の悪徳は、「うぬぼれ」ということです。

 西武グループの総帥をしていた人も、万単位の従業員がいたにもかかわらず、「頭は俺一人でいい」というようなことを言っていました。しかし、最後はひどい結果に終わりました。やはり、「頭は俺一人でいい」などというのは、うぬぼれの極致でしょう。

 万単位の人がいれば、そのなかに優秀な人はたくさんいるはずです。これは当たり前のことです。

 ただ、「頭は一人」ということで、聞く耳を持たなかったわけです。「頭は俺一人」と言ったら、もはや誰も言わなくなります。やはり、「頭脳は俺一人でいい」というのは、うぬぼれにしかすぎません。

 小さい会社なら、一人でもできるでしょう。ところが、だいたい従業員が三百人を超えたら、能力的に一人では無理なのです。ほかの人の力を借りないかぎり、経営はできません。

 能力のある人であれば、三百人ぐらいまでならほとんど自分一人で見ることもできますが、そこを超えたら見えなくなってくるため、やはり、人の力はどうしても必要になります。

 うぬぼれも悪徳の一つであり、最後は誰もついてこなくなります。

 これまでに、負けず嫌いの性格から出てくる「自慢話」「悪口を言う」「反省しない」「うぬぼれ」などの人徳を生まない話をしてきました。

 例えば、部下にでも謝ることができたり、間違いを認めることができたり、あるいは、あまりあくどい責め方をしないなどといった努力をしていますと、器が練れてきて、大きくなっていきます。

 そうすると、人から尊敬されますし、トップの器が大きくなれば、下もまた伸びてきます。「徳を積む」と言いますか、人徳を膨らましていくことは、そう簡単には成就しませんが、日頃から心がけていれば、自ずから育てていくことができます。

 感謝の心を忘れずに、公平無私な態度で、従業員さんと共に、会社を発展させていってください。期待しております。