小林正観氏の「ありがとうの魔法(ダイヤモンド社)」からのお話です。
あえて長くなりますが、引用させていただきます。お許しください。
「私には、知的障害を抱えた長女がいます。彼女は、普通の子どもよりも筋力が足りないため、早く走ることができません。運動会の徒競走では、いつも『ビリ』です」
「彼女が小学校6年生のとき、運動会の前に足を捻挫してしまった友だちがいました。長女はこの友だちと一緒に走ることになっていたため、私の妻はこう思ったそうです」
「友だちには悪いけれど、はじめて、ビリじゃないかもしれない・・・」
「運動会を終え、妻はニコニコしながら帰ってきました。私は、『ビリじゃなかったんだ』と思ったのですが、『今回も、やっぱりビリだった』というのです」
「今回もビリだったのに、どうして妻は、いつも以上にニコニコ嬉しそうにしていたのでしょうか」
「徒競走がはじまると、長女は、足を捻挫した友だちのことを何度も振り返り、気にかけながら走ったそうです。自分のこと以上に、友だちが無事にゴールできるか、心配だったのでしょう」
「友だちは足をかばうあまり、転んでしまいました。すると長女は走るのをやめ、友だちのもとに駆け寄り、手を引き、起き上がらせ、2人で一緒に走り出したそうです。2人の姿を見て、生徒も、保護者も、先生も、大きな声援を送りました」
「そして、ゴールの前まできたとき、長女は、その子の背中をポンと押して、その子を先にゴールさせた・・・というのです」
「この話を聞いたとき、私は気がつきました。人生の目的は、競い合ったり、比べ合ったり、争ったりすることでも、頑張ったり努力をしたりして『1位になる』ことでもない。人生の目的は、『喜ばれる存在になること』である」
「私は、そのことを長女から教わりました。そして長女は、そのことを教えてくれるために、私たち夫婦の子どもになったのだと思います」
このくだりを読んで、感動のあまり涙がこぼれ落ちました。多くの書物を読んできましたが、この時ほど泣けたことはありません。私も知的障害を持つ娘がいますので、自分のことのように伝わってきました。小林正観氏から素晴らしい贈り物を頂戴しました。
ひるがえって、経営の極意は「喜ばれる存在になること」だったのです。お客さんに喜ばれる。従業員さんに喜ばれる。下請さんに喜ばれる。みんなに喜ばれる。これに尽きます。
経営だけではありません。人間関係においても、家族関係においても、あらゆることにおいても、「喜ばれる存在になること」を教えていただきました。ありがとうございます。